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 思い出すのも心苦しい、世界の崩壊の時。

シャンディアは暫し言葉を詰まらせる。

ただ事実を打ち明ければよいのではない。

後ろめたさが滲んでしまうのは、他にも要因があるからだ。




 惨劇が起こるまでの期間も、コアは陸に呪いを放っていた。

しかしミラー族は、人の足を持てたとしても陸に長く滞在できない。

故にその被害を抑える為には、手段を選ばざるを得なかった。

陸で戦う事に有利な存在が何か、口にするまでもないだろう。






 シャンディアは髪の影で眼振を起こす中、判断を下した時の事を振り払って言う。




「コアが姿を露わにした時……

その身に淀んだ闇を払拭した上で、大地に帰してあげられればよかった…………」




けれどもコアが放出する苦痛は夥しく、ミラー族の力のみでは限界と悟ってしまった。




 周囲は、彼等はどうしてもできなかった事を受け止めながら、静かに聞き続ける。




「抑えなければならない……

苦しみに吞まれたままのコアは必ずまた、最悪を起こす………」




皆は息を呑む。




「俺達が教わった神とはまた違うが、結局のところ…

そいつが人間に思うところがあった矢先、下した決断がこの有様か……」




グレンは言いながら、周囲一帯の漆黒の海に目を向ける。

どこにも大陸が無い、ただ黒いだけの世界に。

彼の重い声は特に、他の大人達の心の深いところまで落ちていく。




挿絵(By みてみん)




 彼等は、この場にいる4人には知り得ない、広い大陸を浮かべる世界で生きてきた。

文明が発達し、研ぎ澄まされた知恵がみるみる科学技術を生み出し、進化し続けた世界。

生きる上での豊かさをより増幅させる為に、あらゆる手を尽くしてきた人類。

それを含めて生き物と呼ぶならば、元々、自分達も大地に守られてきたという事になる。

しかしそれに弄ばれ、捨てられようとされているのか。






 「起こさせてはならん……

あんな事態は二度と御免だ」




スタンリーの張り詰めた声に視線が集まる。




「ただでさえ時が経った今でも苦労しとるってのに…

その悪魔はこれに満たされておらんとは、強情にも程があるってもんだ」




落ち着くようカイルに触れられた肩をそのままに、スタンリーはシャンディアを大きく振り返る。




「わし等は人間だ、お嬢さん。

その子等かて、何かあるにせよ所詮は人間なんじゃよ。

魔力も何も使えん、これは普通だ。

あんた等の務めが生き物を守る事だってんならどうか、頼むよ……」




殆どの者が、共に寄り添う存在を亡くした。

年老いた彼にも、愛する者がいた。

募る悲しみから這い上がり、変わり果てた街のほんの小さく残った欠片のような陸地で、崩れ落ちたあらゆるものを目にしながら生きている。

東の者と同様に、世を立て直そうと懸命だ。

あの日、最悪の篩にかけられても遺った、僅かな生命の内の1つとして。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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