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(7)




 張り詰めたその場を見渡したシェナは、大きく一息吐くと切り出す。




「ちょっと。リヴィアの言葉を忘れたの?」




全視線が徐々にシェナに合わさった。

彼女はジェドとビクターの間を縫って出ると、独り佇むフィオの手を強く握る。




「“大丈夫。その目や力は必ず皆を導く。

決して恐れるな”」




フィオはまるで火を灯したように思い出すと、当時を振り返る。




「あたし達には、力を正しく使う事ができるって。

信じて、前に進みなさいって」




子ども達や、彼らを連れて出ようとしていたアリー達も、扉を開きかける傍で立ち止まっている。




「“その身に宿る力を発揮する事に務め、生きなさい”

………そう、生きないといけない。

失われた、多くの命の為にも……

それには、安定した世界がないとダメ……」




シェナはフィオの手に力を込めると、共に旅をした横の3人に頷く。






「………もう誰も…死なせやしない…」




割り込んだのは、生活を共にした人々を島ごと失った、グリフィンだ。




「守る者無くして、世界は成り立たない」




闇の増幅は孤独をも膨らませる。

厳しい精神状態で生きる事の辛さもまた、想像できる。

グリフィンはグレンに止められたところだが、周囲にそっと微笑むと、立ち去ったマージェスのもとへ向かった。






 「じーちゃん、フィオたち、だいじょうぶだって」




ケビンは立ち上がる。




「ほらだって、りゅうといっしょに

ちゃんと かえってきただろ」




だからそんなに怖い顔をするなと、真っ直ぐな目を向けて訴えた。






 藍色の空には雲がかかり、冷たい夜はまるで夜更けを思わせる。

人々は不安に陥る中、急いで出船準備に入った。




 右足に布を巻いたレックスは、引き摺りながらの歩行が可能になっている。

他の漁師達や4人も其々の支度を終える頃、マージェスがグリフィンと漁船まで来て合流した。

何事も無かったかのように接する仲間の傍で、強さを漲らせる4人が乗船する姿を不安に見上げる。




 グリフィンは結局、マージェスにいい言葉をかけられた訳ではない。

何がそうさせるのかと問うてみても、無言で否定されるだけだった。

しかし追い返されることはなく、そのまま、マージェスの方から自然と何かを言い出すまで傍で見守っていた。

彼自身が何かと戦っている事は、見ていて明らかだったからだ。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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