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「鏡」と題する本章では

呪いから免れているシャンディア

ミラー族が持つ力を更にお披露目します







 シャンディアのとんだ発言に心を掻き乱され、ジェドは拳を握ると声が出かかる。

しかしそれよりも先に切り出したのは長老だった。




「返せとは…………

この子はここの子であり、家族じゃ………

シャンディア協力はする、じゃが……

他の手を考えられんか……」




何とか重要な事だけをシャンディアに告げる長老は、緊張と焦りを隠しきれていない。

皆、そんな彼の姿を見るのは初めてだった。

震える息から、恐怖しているのを感じる。






 4人は生まれや育った背景がどこか抜け落ちている不憫な身ではあるが、そんな事は関係なく、奇跡的な出会いを経て大人達が世話をしてきた。

成長した暁には、自ら選択した路を行き、生きればいいだろう。

しかし彼等がそうするにはまだ幼く、ましてや世界は嘗てのように確立されていない。

その上、空島の災難を振り返ってみても、安易にシャンディアと共に行かせられる訳がなかった。






 シャンディアと長老の視線が長くぶつかり合う中、フィオの口元に当たる手が震えている。

そして自分が何か答えを出したいと考えた矢先、足が自然と前に出た。




「大丈……夫……」




シェナが忽ち振り返ると彼女の腕を取り、揺さぶった。




「フィオ!?何言ってんの!?」




何も大丈夫ではないだろう。

この島から友達がいなくなるなど、あってなるものか。

足元で座っていた子ども達すら不安に駆られ、コソコソと慌ただしく声を立てる。




「大丈夫よ。何かできるのよね?私。

そうでしょ?」




とは言うものの、フィオはどこか思い切るように発言していた。

彼女は更に、シャンディアの手を取る。




「助けてあげられるなら、喜んでよ。

終わったら、帰ってくる。

だって私の家はここだから……」




言葉に詰まるシャンディアから察するに、求めている返答とは違うのか。

瞼が僅かに痙攣するフィオはそれでも、無理矢理笑ってみせる。




「彼女や仲間が助かれば、海と浜を行き来しやすくなるかもしれないでしょ?

私達がいつでも会えるようになるなら、それが一番いいわよね。

空は難しかったんだろうけど…海は近いし、リヴィアの時みたいに、お別れなんて寂しい事も無くて済むんじゃない?」



「フィ…



「私はここにいるっ!」




何も言わせやしない。

そう言いた気に、フィオはシャンディアの言葉に被せて遮った。

フィオは笑顔を保てなくなると、そのまま手を拳に変える。




「戦うわ。だって戦ってきたから。

次もできる、絶対。

でもお願いシャンディア、私はここにいたい…

ここには…友達もいる……皆、大事な家族なの……」









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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