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(8)




 体内の毒が拭われた訳ではない。

レックスはそれを噛み締めるとシャンディアに小刻みに頷き、訊ねた。




「………どのくらい動ける…?」



「分からない…けど……1日と少しなら…きっと…」



「それまでに何とかすればいいって事ね!」



横入りするシェナの発言に、皆は顔を歪める。

そんな短期間で事を終えられるだろうか。






 「さて、聞こうかシャンディア…」




夢と思しき事態は真。

長老は一刻も早く片をつけるべく、彼女の登場も含めたこの異常事態は何かと、切り出す。




 太い声で貫かれるような感覚に陥るシャンディアは、言葉を紡いでいるのか。

生じる間には迷いが漂う。

彼女の灰色の眼は、周囲の者達をじっくりと這うと、不安気に足元に落ちた。

その傍には、カサカサと忙しなく床に座る小さな子ども達と、空島から帰還した4人。

彼等の緊張する眼差しは、瞬きも無く震え続けている。




 「時はまた…訪れようとしている………

それを止めなくてはならない……」




静かに話し始めたシャンディアは、一度言葉を切ると、水を口に含んで喉を鳴らす。

まるで、人間を見たり話したりする事に対する躊躇いを流し込むようだった。

手元のカップの水面に落ちるのは、状況に酷く緊張する面持ち。

それは、微かな手の震えによって歪められていく。




「私はミラー族の生き残り……

海を守り…維持している…」



「やっぱ かみさま!?」




ウィルのパッと輝かせる顔と共に上がる興奮する声に、他の子ども達もまた盛り上がる。

それを、背後にいたアリーがそっと静めた。

言わずもがな、大人達は彼等とは真逆の反応をし、心構えをしている。




「嘗て、私達一族が海底の地中に封じたその者は……

増幅する怒りに鏡の蓋を破ろうと、亀裂を生んだ…」




この話に、南から来たスタンリーはおどろおどろと身を(ざわ)つかせる。

彼は、シャンディアの話もそうだが、この場にいる東の者達の身構えに声を堪えるのに必死だ。

異質な存在に対する姿勢といい、またそんな者が口走る内容を、何故こうも冷静に聞いていられるのか。

馬鹿馬鹿しいと、今にも喉から溢れ出そうになっている。




「封印である鏡の蓋の亀裂から漏れ出た呪いは、蛇と化し…それを我々一族が払拭する前に、天に昇ってしまった……」



「「蛇…!?」」




声を張り上げたのは4人だ。

紛れも無く、自分達が空島で敵対した白黒の蛇肌をした魔女ではないか、と。

空島の女王リヴィアがその存在を断ち切り、島は精霊達による再生の歌で再起した筈だろう。

だが、未だ解決に至っていないというのか。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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