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(うたがい)」の章では 人魚の言葉に 大人と子どもが

更に多くの疑問や不安に 駆られていきます







 林を抜けた先で、大人を呼びに向かった子ども達が待っていた。

レックスの家に集まっていた長老やマージェス。

更には、漁船の帆を張り直そうと木材を取りに来ていたカイルやグレンも、その場に居合わせていた。

(じき)にこちらに着く4人の光景に、誰しもが目を見張る。






 運ばれてくるのは、彼等と同じくらいの少女。

煌びやかなスカートはまるで、銀色のドレスを纏っているように美しい。

急病者がこうも連続で出ると、胸が騒ついてならない。




「うちで寝かせるといいわ」




声を掛けたのはケビンの母。

フィオとシェナが幼少期に世話になった彼女だが、それはそれは手厚いケアをしてくれる。




「けどこの子、人魚だ」




ビクターが説明すると、特に漁師達は一気に後退(あとずさ)る。




「でも違う!見て!

漁船を襲ったものとはまるで別よ!

ほら、人の足に変わった!」




フィオの話に合わせ、シェナが咄嗟に頭上高く少女と化した人魚の足首を上げて見せた。




「まっちろ!」




リサは曝け出された純白の肌に、思わず高い声を上げる。




「人間と同じ寝床でよいものか、今は分からん……

すまんが、そのまま運んでやってくれ…」




4人は長老に言われ、そのままケビンの家に向かった。






 その後を追う子ども達の内、ウィルがあるものを見つけてふとしゃがむ。

それを見ていたカイルが膝に手を付き前屈みになると、彼を眺めた。




「あのこの ふく から、おちてきたよ。ほら」




まるで硬貨に似た大きさをした鏡に、カイルは目を疑う。

人魚と言われる彼女の鱗か。

マージェスやグレンも、それに眉を顰めて黙り込む。

奇妙な事態に、その場の大人達の背筋が凍りついた。









 温かい、不思議な香りが立ち込める空気。

空の神によって浄化されたのではないこれは、人間によるものか。




 筆頭の魔力を借り、己の力を何とか振り絞ると、海の流れに身を委ねるだけで精一杯だった。

この姿も、そう長くは持たないだろう。

蓄えている限られた力を上手く練り、一族の復活を果たすのだ。




 暗い胸に蠢く多くの悲しみ。

そこに垣間見える光る未来を求め、瞼の下の双眼が震えた。

閉ざされた視界が泪でぼやけ、緩やかな波紋を広げては消えていく。




 失われかける一族の魔力に不安を抱きながら、暗闇に見える薄い目的の子の存在を、夢中でか弱い手を伸ばして追い求め、声を搾り出そうとする。




 「大丈夫!?しっかりして!」




威勢がある掛け声は温かい風を柔らかく吹かせると、薄くなるその存在を包み隠してしまう。

まるで、その風が目的の子を守っているような気がしてならず、果たしてそれでよいものかと胸が苦しくなる。




 神が、人間が、再び消されようものならば、この地球ほしはいよいよ闇に没してしまう。

未だ鎮静されていない大地の怒りが遺る魂達を消してしまう前に、何としても止めねばならない。

暗闇に広がる波紋は、力強く開いた瞼に拭われ




「っ!?」




少女の姿をした人魚は熱さに堪らず、かけられていた毛布を蹴り飛ばした。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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