(8)
フィオは尻もちをついた状態でマージェスに引かれながら、目前の人魚から後退る。
端ではジェドとビクターがそれらに身構え、鋭利な目を向けていた。
「何だってんだ急に!」
マージェスの怒りに人魚は、皺枯れ声を激しく放ちながら匍匐前進で接近。
垣間見える爪の先から緑の液が流れ、新船の床をみるみ汚していく。
「危ない!」
真上からのシェナの声に合わせて更に、2体、3体と人魚が悲鳴を上げながら船内に飛び込んだ。
船内が振動し、騒々しくなる。
そこへグレンが2丁のライフルを持って現れると、1丁をカイルに投げ渡した。
そのまま2人は照準を合わせよとするが
「待て!こいつもまた異変だ!殺してどうなるか!」
マージェスは、人魚達を怪我にまで留めて海へ戻せと指示するが、網の半ばで留まっていたレックスが割って出る。
「正気か!?客人はこっちを殺そうとしてる!
それに何体いると思う!?」
彼はそのまま飛んで着地すると、持っていた槍を引き抜き、頭上を飛び交う人魚の下で身を屈めた。
「ああ食えるなら別だがな!見るからに不味そうだ!
とっとと叩き出せ!」
船内には既に8体。
ジェドは腕に、ビクターは腰に備えていたナイフを抜き、人魚の出方を見る。
フィオは槍を抜き、やっとこさ立ち上がると大量のそれらに目を凝らす。
「お前等相手にするな!奥へ入ってろ!」
カイルが怒鳴るが、聞けるものか。
「手がいるだろ!」
ビクターは顔の向きを変えずに言い放った時、いよいよ人魚が接近。
床を這うので位置は低い。
透かさず下顎を蹴り上げ、仰向けに転がしてやる。
脇では、床を尾鰭で蹴り上げた1体の顔面に、ジェドが1発殴って叩き落とした。
フィオは目前にいた1体の頭頂部に槍を振り下ろし、その肩に連続的に蹴りを入れながら後方へ押しやっていく。
どれも間髪入れず速やかで、滑らかな身のこなしだ。
大人達は一時、3人の行動に目を奪われる。
「さっさと手伝え!何してんだ!」
ジェドは唖然とこちらを見つめる大人達に怒鳴りつける傍ら、別の1体が彼に牙を剥いて接近する。
振り向きざまに、ナイフで軽く胸部を引っ掻いた。
案の定、薄い肌は枯れ葉を切るように脆く、爪から流出していた緑色の液体と同じものが伝う。
異様な血の色に、皆の身の毛がよだつ。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




