表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/187

(1)




(きっさき)と読みます

文字通り 多くの「先端・刃先」が登場します

本部はプロローグを振り返る形で 新たに進展します







 闇夜のような海底には、光一つ届かない。

その者は気泡の音に包まれながら、寂し気に佇んでいる。

刺さるような水温に震えながら、独り苦しんでいる。




 どうしても躊躇ってしまう。

あの子達が空島から戻った、あの月夜すら。

変わらず、同じ様に躊躇い逃げてしまった。




 あの子達は、どうであれ人間だ。

なのに、再び縋ってよいものか。

否、もうその様な事は言っていられない。

このままでは、一族が滅んでしまう。

その果てに見る未来が恐ろしく、目を背けた。






 嘗て起きた大惨事。

滅びゆく人間の前にようやく姿を現した巨人だが、その心に募る苦痛は抵抗力を増し、最早、今のミラー族の力だけでは止めきれないだろう。




 気泡一つ捉えられない深海の闇をぼうっと灯す純白の肌は、鏡の人魚の存在を際立たせた。

鋭利な尾鰭は刃の羅列の様で、揺れる度に黒い長髪が垣間見える。

飾り気のない髪に触れては、哀愁に満ちた顔を覆った。

力の源を、失くしてしまった。

震えるかぼそい手は、魔力の減少を示している。




 一族が脆くなりゆくせいで隙が生じ、人間を再び危機に晒してしまった。

あの子達が空から帰還したとはいえ、その地を乱したあの蛇は巨人による呪いに過ぎなかった。




 “シャンディア……あの子に……人間に告げろ……”




再び、一族の筆頭の声が過る。

呪いで半壊しても尚、行く末に抗い続けている。

その身に残された僅かな魔力を絞り出し、封印は維持されていた。

だが、その腕もじきに折れるだろう。

このまま封印を砕かれては、神々を含め、生物は抹消されてしまう。

最悪を回避するために今こそ、血を受け継ぐ者が必要だ。




“コアに纏わりつく、数多の……

堆積した辛苦、憂いを払拭せねばならない……

行け……行ってくれ……”






 鏡の人魚は独り、身震いする。

顔をようやく上げては、暗い眼差しを潤わせた。

鏡と化した双眼に映るのは、晴れ間の下で笑い転げる、ずっと見てきた四人の姿。

先程、あの子はこちらを見た。

もう一度、もう一度だけ振り向いてはもらえないだろうか。




 鏡の双眼はふと、元の濃い灰色に返る。

ようやく、意を決した。




 我ら神は、それでも必要なのだ。

先代が遥か遠くから指し示した、この手には及ばない人間の力が。




挿絵(By みてみん)









髪につけていたであろう飾りを

失くしたそうですよ




――――――――――――――――




代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ