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挿絵(By みてみん)




 暗い林から、カサカサと植物の音が立つ。

風ではない。

この忙しなさは




「んーーーーん"ん"ーーーー!」



「ん?んん!ん"ん"ーー!」




ジェドだと明るく迎えるフィオとシェナだが、鮭やコダラに齧りついてそれどころではない。




「やったな」




ビクターはムール貝を呑み込み、殻を適当に放り投げるとニヤリとする。






 「甘いってよ。ど?どす?なんか、高くないって」



「度数だろ?」



「何?それ」



「ねえどんな匂いするの!?

私達本当に飲んでいいの!?」




ケビンは断られたと話す中、グリフィンが言っていた事を伝えた。




「ありゃチビだからだ。俺等は違う。だからいける。

……結構入ってるな!」



「嫌がって飲まなかったんだよ、ケビンの母さん」




ジェドが座るなり、ビクターが巨大な鮭を突き出した。

一仕事して空腹だ。

彼は熱さなど気にせず大口を開き、3口も4口も瞬時に喰らいつく。




「ここここ!ここにちょっとだけ入れて!」 




シェナはビクターに、ホタテの殻をコップの代わりに突き出した。

その横からフィオも同じように手を伸ばす。




「お前が取ってきたから多めな」




伸びてきたビクターの手に目を向けると、ジェドは手にしていた魚を浜に突き刺し、口元を豪快に拭ってそれを受け取る。




「一気に飲まないでよ。

美味しかったらまたお代わりしたいんだから」




分け方は明らかに偏っている為、フィオが一言告げる。




「じゃあまずは一口な」




ビクターは注いだそれを突き出すと、それはそれは楽しそうに4人で乾杯する。

しかし




「ぶっふぁっ!」



「ぶぇっ!」



「げえええっ!」



「ひいいいいいいいいっ!」




炎に向かって吐き出され、不意に火の粉がパチンと立つ。

それに驚き体が弾け飛ぶが、それを恐れるどころではない。

甘いなど嘘だ。

酷く苦い上に、この、舌にいつまでも残るこびり付くような味は何だ。

痺れているこの感覚は、毒ではないだろうかと激しく咳き込む。




「美味しくないじゃないのよ!」




シェナもフィオも貝殻程の量だ。

一口で飲み切ってしまい、お代わりなどとんでもないとそれを投げ捨てる。




「喉いてぇよ!」



「バカ!これをグッと飲むのが男だ!

飲んじまうぞジェド!」




ビクターの発言に、冗談だろうと端で引く彼女達だが、後の2人は諦めない。

不味いこれを、結局は楽しんでいる。




「よしっ…」




2人は互いに頷くと、喉を鳴らしてそれを一気飲みするではないか。




「「あーーーー……」」




眉を顰める後の2人は、顔を歪ませながら見届ける。




「ぐえええっ…」




ジェドが嘔吐く横で




「かーーっ!不味い!

何がいいんだよこんなもんのっ……うっ…」




ビクターが腹を押さえて浜に手を付き、下を向いた。




「「ビクター!?」」




酷い嘔吐(えず)きに、吐くのではないかとフィオとシェナが動転する。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


8月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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