(11)
「青くないよ?
火の色だから、オレンジ色よ?フィオ」
「そう?……そうねぇ、今はそう。
でも、さっき見えなかった?」
「いいや?」
「見えないわよ」
どうしてだろう。
だがあまり、深く考えない事にした。
何故ならこの世界には、不思議な事もあるのだから。
そういった体験を、自分達はしたのだから。
「まあいいわ!で、ジェドの任務って何?」
フィオの質問に、シェナが両膝を抱えて小さくなる姿勢のまま、ビクターに釘付けになる。
「酒。持ってくる」
「「うっそーーーーーーーー!」」
「ほらな。欲しがるだろう?」
ビクターは今朝のジェドの発言を思い出しながら、シェナに言ってやる。
彼女は大きく頷いた。
「でもお酒って、あたし達まだ飲んじゃいけないって言ってなかった?」
「何で飲んじゃいけないのかしら?」
「別に飲んでもいいさ。
俺達だってカイル達と同じ人間だし」
「ああ!あたし達にあげる程、無いからよ!
独り占めだわ!」
「そう言えばジュースみたいに綺麗な色をしてた。
私達が好きなやつなんじゃないかしら」
「それを確かめる為に、あいつが持ってくる」
「「どうやって?貰えないでしょ?」」
「誰が真っ直ぐ貰うなんて考えるか。横取りだ」
ビクターはそう言うと、少々焦げ始めたコダラの角度を変え、派手に突き立て直して悪戯な笑みを浮かべた。
悪戯の歴史は彼が長い。
また新たな悪知恵をジェドに植えつけたか。
そこは集まりの際に使いやすい広い建屋で、元々散らかっていた机や椅子と思われる物を改造し、再利用している。
火はどこも絶やさず、ここでも煌々と室内を暖かく照らしていた。
香る食事の匂いは大抵似たようなものだが、今は判別できない香りも漂っている。
果物だろうか。
そんな事を予測しながら、ジェドはベンチが囲う大テーブルの下に潜んでいた。
「あらあの子どこ行ったの?」
「さっきまでそこで本を読んでたけど。
浜じゃないかしら」
話しているのは長老の世話係を務めるアリーと、グレンの奥さんだ。
存在を認識させておいてからの、いなくなった事を装う流れは順調だ。
さてここから、テーブルに置かれていくグラスを取るのか、死角になる蒸留装置がある場所まで接近するのか。
大人の動きで判断していく。
代表作 第2弾(Vol.1/前編)
大海の冒険者~人魚の伝説~
8月上旬完結予定
後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)
大海の冒険者~不死の伝説~ をもって
シリーズ完全閉幕します




