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ここからの「潜」は文字通りです

本章の終盤で 入り口を開き

閉幕と共に 入り口を閉じます







 東の島は、静けさが妙に籠っている。

そう感じるのは、今も堅く下ろされている鏡の帳の影響か。

とは言えそれ以外に変化はなく、闇夜にただ、火を点々と浮かび上がらせているだけだ。

黒い波は絶え間なく、岩を不安定に打ち続けている。

外側からも、内側からも、互いに存在を眩ませている今、人気があっても物寂しさが後を絶たない。




挿絵(By みてみん)




 浜に腰掛けていたグリフィンは、松明を脇に、シャンディアの言葉や、秘められた謎を血に通わせる4人を思っていた。

砂に埋もれた足が炎に照らされるところから、何もない宙を這って空を仰ぐ。




 悪夢のような空島の出来事を、忘れた事はない。

忘れられる筈はなく、忘れたいと思った事もない。

この崩壊した世界に残り、尚も脈打ち続ける魂の存在を、多く知る事ができたのだから。




 生き永らえている理由が奇跡以外にあるとすれば、何か。

それが象られる時が来るのかは、分からない。

だがこうしていられる間は、感じたものに向き合い、時折、今のように戦いながら大地を歩もう。




 その大地と言えばだ。

それが怒る要因が何かを探る度、目を曇らせる。

厚い雲に覆われた夜空は素っ気ない。

いつもなら、神々の眼を思わせる星々が瞬いているというのに。




「……なぁ……見てるのか……」




無意識に溢れた声に答えるように1つ、遠い空で何かが光ったような気がし、目を凝らす。

だが違った。

松明からの火の粉がただ、舞い上がっただけだ。




 地上にはない美しい星彩(せいさい)や月光は、安らぎを(もたら)す。

それが無い今、島ごと昏い世界に陥れられているようで、溜め息と共に肩を落とす。




 漁船が発ってから長い。

彼等の戻りを気にかけながら、留守番する者は早めの夕食を終え、出迎える準備を整えていた。

どうか無事に帰還できるよう、先程から拳に力を込めながら強く祈り続けている。






 独り、無の時間を過ごした後、端の松明を引き抜き立ち上がった。




「ここにいたの」




驚かせるような事の無い、消えた蝋燭(ろうそく)の煙を思わせる柔らかな声。

心配でならない感情が滲んでいながらも優しいアリーの声は、弱々しい潮風に運ばれてきた。




「子ども達が探しに出ようとするものだから……」




間を置いた彼女は、肩越しに振り返ったまま無言で立つグリフィンに、大丈夫かと気にかける。

松明に揺れる俯く彼の顔は、恐ろしいものではないが、不気味だった。




 消滅した西の島から這い上がった者。

彼もまた4人と同じ、旅の者としての顔があった。

ただの島の大人としてではなく、教師としてではなく、体を張って戦った者が持つ用心深い人間の顔を。




「ああ……少し、思い出してただけだ……」




そして微笑むそれもまた、いつも通りだ。

4人に似て、心を少しばかり隠すのだった。









代表作 第2弾(Vol.1/前編)

大海の冒険者~人魚の伝説~


9月上旬完結予定

後に、代表作 第3弾(Vol.2/後編)

大海の冒険者~不死の伝説~ をもって

シリーズ完全閉幕します




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― 新着の感想 ―
拝読させていただきました。 時間がかかりすみません。 ジェドの能力が加速装置(……わかるかな?(^^;))みたいでかっこいいですね! それぞれの能力が明かされつつ物語は進んでますね、また時間が空…
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