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「撮影か?」
「それなんだけどさー……あ、もう大丈夫? 明崎」
「……あー、大丈b」
「もう聞いてよ明崎ー!」
「んぎゃっ」
霧ヶ原が耐えかねたように、ガバッと勢いよく抱きついてきた。
「な、なんなんなんなに! 何なん何があったん!?」
尋常では無い様子に、何事かと仰天した明崎だったが。
「笠原君だけじゃ無かった。僕もロックオンされてた……!」
「……はぁ」
ある意味予想していた内容だったので、大いに脱力しかけ。
「セミヌード撮ることになった」
「……は?」
セミ……ヌード?
拍子抜けした声を上げてしまった。思わず霧ヶ原の裸体を想像する。
……あ、でも。
「セミヌードやろ? ほんじゃあ上半身だけとかなんちゃうん?」
「いやそれがさ……定義調べたんだ」
「ほぉ」
曰く。ヌードは大きく分けて、セミヌード・ヘアヌード・フルヌードと三つくらいある。フルヌードは全裸、ヘアヌードは……まぁアソコの毛まで見えちゃうぜーなヤツで、ただし肝心の部分が隠れて見えない、というもの。
そしてセミヌード。これは上半身だけのものから、全身を後ろから撮ったり、または非常に薄い服を着て透けさせた状態にしたりするものなど……範囲が広いらしい。
で、恐らく奏女王のことだから上半身だけで終わらすはずがない、という霧ヶ原の推測。
そこまで聞いたら想像してしまう。霧ヶ原が羞恥に悶えながら、あはーんなポージングで撮影に挑む……そんな光景。
「ぶっは!」
明崎は盛大に噴き出してしまった。
「ひ……ひひ、」
それでも僅かな良心が動いて、一応堪えようとしたが変な笑いが漏れるばかりで終わった。
「アカンわソレ……ひひひ!」
「何だろうねぇこの湧き出る殺意は。とりあえず殴っていい?」
「ぶふっ……ハハハッ……あー、待って。待って、そのグーはせめてパーにして」
そこへ、長野が戻ってきた。
「あ、副会長?」
「どーも副会長です」
霧ヶ原は長野に対して乾いた微笑みを浮かべる。
「あのーところでさ。僕って一応クリーンなイメージで通ってるはずだよね」
「うーん、まぁ(それ色々と物議を醸すと思うんだけど)そうなんじゃない? 何で?」
「何故僕がセミヌードを撮ることになったんだろう?」
「え、うっそ副会長だったのその話!」
長野はびっくりした様子で声を上げ……それから気の毒そうな表情を浮かべた。
「えー……あれを副会長にやらせるって……」
「え、ちょっと待って。すごく不穏なものしか感じない。あれって何?」
「ううん……
……それパンツのモデルなんだよね」
「ファーーッ!」
とうとう膝から崩れ落ちた明崎は、腹を抱えて笑い死ぬ勢いで爆笑する。
「うそぉ……」
愕然とする霧ヶ原は、顔面蒼白で頭を抱え……次いで、顔を両手で覆った。
さながら悲劇の王子といったところだろうが、何せ理由が理由なのでコメディ映画のワンシーンにしか見えない。
「えっと……何というか、ご愁傷様です」
気遣わしげに声をかける長野。
その後ろで聞いていた生徒たちが密かに合掌しているのを、笠原は目撃してしまった。




