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なんて、油断していたら。
「カテゴリ分けも……例えば霧ヶ原は超感覚的知覚者って言って、あいつの透視は〈ポスト・コグニション〉に当たる」
「うん?」
何? 何やて?
「須藤は〈テレポーター〉。鐘代も〈エレキネシス〉。侍君は……〈ミュータント〉と〈サイコキネシス〉のどちらも可能性が、」
「おおぉ……ぉーぃ、伊里塚君」
「あ?」
「ごめん、冒頭から全く分からん」
超感覚何ちゃらが出てきた時点で脳の漢字変換が間に合わんかった。
「超感覚何ちゃらから説明プリーズ!」
「お前……将来保護観察員になるんだろ?」
呆れたように伊里塚から顔をしかめられた。
うん、ごめん。俺基本はアホかもしれへんわ。
「基本中の基本だぞ。それぐらい暗記しろ」
何だかんだ言いつつ、伊里塚は説明してくれた。
まず、超感覚的知覚。
五感以外の能力で外界の情報を得る力で、テレパシー、透視、予知、千里眼などがこれに当たるらしい。いわゆる第六感というもので、霧ヶ原のように過去を透視する能力はポスト・コグニションというそうだ。
テレポーターは置いておくとして、エレキネシス。
これは何も無い所から電気を起こせる能力の名称で、他にも火を発生させるパイロキネシスなんていうのもある。ちなみに、帯電した静電気から強い電磁波を発生させて発火を起こす例もあるため、奏女王は結構危険な能力を持っているのだそうだ。
笠原は水を念で操るし、背中は謎の鱗が覆っている。なので念力と突然変異の可能性が考えられるという。
伊里塚は自分のことをきっぱり「突然変異だ」と言った。
「別に出自や経緯は全くカテゴリ分けされていないからな。けどその辺にまで手ェ出し始めたら……侍君は人魚認定されるかもしれないぞ」
「人魚!?」
伊里塚君、何つー突拍子も無いことを。
「本当に寄せ集めでしかないってことだよ」
他人と違う能力を持っている。
ただそれだけで、とりあえずセカンド・チャイルドという括りに振るい分けされた自分たち。
つまり笠原がガチで人魚かもしれない、とか。霧ヶ原が実は人間の皮を被った宇宙人かもしれない、とか。そんな可能性があったとしても、とりあえずセカンド・チャイルドな訳である。
……まぁ、今さらキリオ君がプレデターVSエイリアンだったとしても驚きはせぇへんけど。
「ちなみに俺って何なん?」
「分からん」
「えぇっ!」
「お前なんかは近づくだけで相手の体質がそのまんま身体に出るだろ。そっちの方が仕組み分かんねぇっての」
「まぁ……確かに」
言われてみれば。
「それにしても人魚ねぇー」
最近笑うようになった美貌の同居人を思い浮かべる。
笠原は確かに水が好きだし、水の中で一生生きられる人だ。それに水も操る……し?
ん? 待て待て待て。それじゃあホンマに人魚なんちゃうか? 鱗だって、あれも人魚の特徴やし。
…………。
もしも。もしも仮に。
笠原が人魚として認定されたなら。
人魚=俺が魚拓取っておく=世間のトップニュースであらゆるメディアに引っ張り凧=紆余曲折ありつつも最終的には魚拓がイギリスの博物館まで出張して展示。
俺と笠原=人魚フィーバーで金持ち☆
……ちょ、これ完璧ちゃうの。
「なぁ、伊里塚君。魚拓セット買うていい?」
「アホか」
そんな上手いこといく訳無かった。




