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「もう他は軽く修正入れるぐらいのものだよ。後は笠原君のページだけ」
「……しかし、俺もバイトが」
「笠原君、水曜と金曜が休みでしょ? あと……再来週の日曜に定食屋さんが臨時休業するよね?」
「…………」
相変わらずのトンデモ情報収集力である。
「ちなみに霧ヶ原君からもこの企画は了承済みだよ」
「あー……やんな?」
「生徒会も関わっているのか?」
「一応学校の発行物やから、原稿もチェックしてんで」
大方、鳥潟の生着替え写真とかで釣られたに違いない。だが、霧ヶ原が引き込まれるのは予想範囲内。周りから固められて圧力がかかっているが、最終は笠原が頷かなければ済む話なのだ。
幸い、笠原も大分渋っている。
「……絶対やらないと駄目なのか?」
「うん」
「………」
よし、よし! そのまま。そのまま粘って断るんや!
「そうそう」
奏は思い出したように、付け加えた。
「僕、一時期ケーキ作りにハマって色々道具買い揃えたんだ。飽きちゃって捨てようかと思ってたけど……良かったら譲ろうか」
――その時、笠原の目の色が明らかに変わった。
「………」
「えっ、ちょ、」
何か、考えこんでへん?
「ハンドミキサーからシフォンケーキの型まで一式あるよ。……そういえばクグロフ型も有ったかな?」
「……その話、もう少し詳しく聞かせてくれないか?」
何ィいいいいいっ!?
嘘やろ君、物で釣られるとか!
そんなヤツやったんか!?
「あかんで! 君ヌード撮られんで!」
「ちょっと関西人。何人聞き悪いこと言っちゃってんの」
「いやいやいや! 俺知っとるからな! アンタの普段の極悪非どっ、ぷぎゃっ」
バチチッ
目の前で電気を炸裂された。明崎は椅子から落ち掛け、笠原もびっくりして椅子ごと後ろに退いた。
「……ここ、人の目もあるんだからさ。ちょっと黙れよ」
奏はにっこり笑いながら言う。
うわぁああ……武力行使に出よったこいつ。
がっくり項垂れた明崎である。
……何やろな。奏女王を相手にする度に試練がやって来てる気ィすんねんけど……絶対気のせいちゃうわ。




