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「イイ反応するじゃないか、関西人」
奏が椅子から立ち上がり、明崎にゆっくり近づいてくる。
「顔も悪くないし……泣き顔も可愛いかもね」
何か……話が物凄く嫌な方向に向かっている気がしてならない。一メートル手前で立ち止まった奏は、あの蠱惑的な笑みを浮かべて言ってくれた。
「せっかくだから今ここで縛ってピーッにバーン☆ぶっこんでズキューンにバキューン❤︎してみようか?」
ひぎゃあああああ何その言葉責めぇええええ!!
さすがの女王様である。あらゆる意味で彼は女王様だった。
「ふふ。おねだりできるようになったらウチの下僕たちにも可愛がらせてあげるから」
イヤやそれなら感電死したい感電死させてくださいお願いします! でも今死にたくないっ!!
聞くに堪えないフレーズを耳に捻じ込まれ、
ついに、明崎の緊張と恐怖が限界突破した――
「たっ……」
「ん?」
「たかが救急車呼んだぐらいで……三年間下僕にされて堪るかぁあああっ」
ヤケクソだった。声を張り上げると、途端に電気が襲ってきた。もう冷静さを失って訳も分からない明崎は、夢中で痛みを強く押し返すようにイメージした。
これで駄目なら、もう死ぬしかない――!
バチチチッ!
凄まじい音で、二人の間で青みがかった閃光が大きく炸裂した。カメラのフラッシュを何倍も強くしたような眩しい光を放って――消えた。
同時に……信じられないことに痛みが引いた。
「お……?」
あ……成功した? 跳ね返せた?
「僕の力を跳ね返すなんて……」
奏の驚いたような声。
あーっ……あー! 良かったぁー!
その言葉を聞いて、明崎は脱力して思わず座り込んでしまった。もうこれで怖い思いはしなくて済む。そして下僕共にナニされる心配もしなくて済む。
だが奏は動揺した訳ではないらしい。よくよく見ればどこか楽しそうだ。
「ちょっとはやるじゃん、関西人」
「え、え。や、待って。これ以上なんかあんの?」
「どうだろうね」
「あ、濁しよった」
じゃあ……今ので最大出力だった訳ね。
へーんっ、楽勝なんやけどー! もうどっからでもかかって来いや、やで!
ついさっきまで半ベソ状態だったにも関わらず調子良く復活した明崎。
ッパァン!
なんて思っていたら、斜め向かいのガラスコップに電気が走って、粉々に弾け飛んだ。
……:(;゛゜'ω゜'):
……引き攣った笑顔を凍りつかせたまま、恐る恐る床に散らばったガラスコップの残骸を見遣り、それから奏を見た。
女王様はにっこりと、それはそれは美しく微笑んだ。
「勘違いしないでくれる? 今日は場所が悪いから強くできないだけ」
外に出たら、雷でも何でも落としてあげるんだから――
その日、無事に家へ帰れたものの、明崎は恐怖のあまり一睡もできなかったのだ……




