須藤もやってた
そんな訳で、数日後には笠原がバイトを始めた。
さすがにバイトもしている人間に家事の一切を任せっきりにするのも気が引けるので、明崎も洗濯とか皿洗いぐらいはすることにした。料理と掃除は全く笠原には敵わないので、やはりそれらは笠原の領分である。
「あの人あかんわ。ウチの家事全部こなして定食屋のバイトするとか言い出してんで」
「顔があれで性格もあんなんでその上成績もトップで……最早存在がギャグだな」
「で、俺あかんわカスやって思っとったけど、よう考えたら須藤おるやん! って閃いて。そんで来てみたら……お前こんな地道でせこい仕事しとったんやな。知らんかったわ」
「おい。今『せこい』っつったかコラ」
須藤も家事はほとんどやっていないし、バイトもしていない。それに風紀委員の特攻隊長とはいえテレポートを上手くいかして、こいつも大分遊んでいる口だ。
同じカス同士仲良くやろうやないかい。と、意気揚々と須藤の部屋を訪れたのだが――
まさかの内職をしていた。しかもポケットティッシュの裏にチラシを入れていく作業だった。
「これだったら帰ってからチャチャッと終わらせられるからな。毎日やってる」
須藤はここでもテレポートを使っていた。チラシをポケットティッシュの裏に瞬間移動させているのだ。
何て好都合な! こいつほっとんど手ェ動かしてへんし! これを働いてるとは言わへんで! いいや俺が言わせへん!
……けれど悔しい話、進んでバイトをしているのは明崎よりも偉いと言わざるを得ない。
「くっそ須藤に先を越されるとはっ……くぅーっ!」
「くぅー! じゃねぇよバーカ。つか俺もお前如きに見くびられていたと思うともう屈辱的過ぎて、手元にワサビあったらお前の顔目がけてぶちまけたいわ」
「どんだけ俺に見くびられて屈辱なん!?」
しかもワサビって悪意しか無い!
「けどお前だって短期バイトやっちゃあガボッと稼いでんだろ」
「まぁせやけどー……なんか向こうだけたくさん働いて気まずいやん? 同居人として」
「お前その『同居人として』って発言多いよなぁ。何でそんな気にしてんの」
「ほんじゃあ聞くけど、須藤の家に柳田が住んでたとして、向こうがせっせと掃除とか洗濯してる間、自分ごろごろとテレビ観れるん?」
「いや手伝う」
「そういうことやん」
全く――柳田のことになるとこれだ。
「……で、結局何しに来たわけ? 俺んトコに」
「……何でもありませんでした、すんません」
「帰れ」




