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笠原さんがバイト始めるそうです

 最近、家の中が綺麗になった。

 まず床にこまごまとした物が放置される光景を見なくなった。床が見える。部屋も埃っぽくなくなった。

 カラーボックスに考えもなくごちゃごちゃ突っ込まれていた文房具やPPロープ、スプレーに工具セットはカテゴリ別に整理整頓されているし、キッチンからはしょっちゅう洗い物をする音が聞こえてくる。

 それに温かいご飯が出てくるし、洗濯物も二日に一回は回すので山のように溜まらなくなった。到底、高校生に――ましてや男子に成せる業ではない。少なくとも明崎と須藤にはできなかった。

 毎日掃除して、食事も作って、しかも洗濯は朝に済ませるなんて……

 ところが、彼はこれらを苦も無くこなしてしまう。さらりと、スマートに。

 家事万能なイケメン男子高校生って今時いないと思っていたけど、いや漫画にしかいない想像上の生き物だと思っていたけど――

「そんなに見られると……やりにくい」

 明日の朝ごはんにと、タマネギと赤パプリカのシンプルかつ鮮やかな炒め物を皿に盛り付けていた笠原が、耐えかねたように口を開いた。

「ごめん笠原。俺マジAKYやわ」

「全く意味が分からんぞ」

 訳:ごめん笠原。俺マジ「赤ちゃんからやり直すべき」やわ。

 自分の怠けっぷりに、ちょっと打ちひしがれる明崎である。

 どこでどう時間を使って、どういう行いをしたら笠原ができあがるんやろか。うーむ……これは人類進歩の重大な鍵に違いない。

 人類の神秘や神秘。本一冊書けるくない?

『世のお母さんたち必見! これで老後は安泰、理想のイケメン息子の育て方!』って読むだけで笠原ができあがるんなら百万部突破も夢じゃないってな!

 ハハハ……ああ?俺の人生全否定されとる感パネェわ。

 これ人生やり直しても間に合わんのちゃうかな。前世の行いから違うんやできっと。

「……あの、」

「え?」

 まぁ……まぁ、ええわ!

 俺がこうして過ごしてきたから、島内だけでもザルですくえるほど知り合いがおる訳で。楽しかったらそんでええねんて。

 ……多分、うん。

「バイトしようと思っているのだ」

「……えぇ?」

 今この人何言うた? バイト……


 ――バイトォッ!?


「マジで」

「学校行く途中に定食屋があるだろう? バイト募集の紙が貼ってあって、厨房らしい。……貯金はしていた方がいいと思ってな。備えあれば憂いなしとも言う」

 ここで補足を入れておこう。


 笠原:帰宅部。料理洗濯掃除、つまり家事を全て担当。学業面も優秀。明崎の知る限り一番親孝行な少年。定食屋でバイトしようとしている。


 明崎:帰宅部。生徒会と風紀の手伝いを時々しているが、それ以外は人付き合いに励んでいる。短期バイトをちょこちょこやっている程度の基本遊んでる系男子。将来のことなんか全く考えちゃいない。


 結論:俺 = カス


「うわあああごめんなさい笠原さん俺ホンットKY(カス野郎)や!」

「……アンタやっぱりおかしいぞ」

「人生やり直したい」

 なんか……今すぐ土下座したい。


 orz

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