3
……ここまでの一部始終を見ることになった友人二人は、再び顔を合わせることになる。それから、心なしか緊張した面持ちになった笠原に声をかけた。
「すっごい仲良くなってんね」
笠原は顔を上げて、話を振ったクラスメイトを見る。
「あの、明崎とさ」
「……正直、どうして明崎とここまで仲良くなれたのか不思議でならない」
「あー、だって世話好きだしなぁ。寮も一緒だろ?」
「あぁ」
「あいつほっといても喋ってるからなぁ。毎日うるさいっしょ?」
「だははっ」
思い当たる節があり、笑い出した友人二人に釣られる形で笠原も笑みを浮かべる。
「話は聞いていて楽しいし、飽きないな」
そう答えた笠原に、笑っていた二人は「おっと?」と視線を交わす。
「まーなぁ。確かに面白いけど」
「いっそ付き合っちゃう? お二人」
「付き合う?」
可笑しくなって、笠原は笑った。久々に、こうして他人と話すことが楽しいと思う。
「明崎だったら優しいしな。そういやあいつ誰かいたっけ?」
「いないだろ? だいぶ前に別れたし」
「あー、そうね」
「あの人モテるのか」
「「超モテモテよ」」
「た〜だいま〜」
そうこう話しているうちに、明崎が帰ってきた。
「今何の話〜?」
「ん〜? お前の悪口〜」
「やだーやめてぇ〜、笠原君に変なこと吹き込まんといて〜」
席に着いた明崎は、ごく自然に会話の輪へ戻る。笠原の中でまだ残っていた緊張が、今度こそするりと解けて消えた。
やっぱり、明崎がいた方が落ち着くのだ。そうして笠原は、自分が彼をどれだけ信頼しているのか気づく。
「せっかく仲良うなれたのに。なぁ?」
明崎が小首を傾げて聞いてきた。
ちゃんと全部知った上で、友人として接してくれる。
そのことに何とも言えない嬉しさが込み上げてくるのを覚え、笠原ははにかんだ笑顔でそっと明崎を見返した。長年に渡り強張っていた心は安心感に包み込まれ、いつしか優しくほぐされていた。
……完全に明崎に懐いている。
そして友人二人は、今の笠原にぴったりな言葉を同時に思い浮かべていた。
……正直初めのツンツンっぷりが印象に強くて、ちょっと唖然としているものの。しかしまぁ、取っつきやすい方へ変わってくれたのだから、悪いことじゃない。けど、思うにこれは……
もしかしてこの二人付き合うんじゃないだろうか。
友人二人は、遠からずそんな予感がしたのであった。




