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「うひゃーっ、何か楽しいわこれ」

「……もうやらんからな」

「もーいっかい! もーいっかい!」

「やらん!」

「えー……ケチ。もう君にあげへん」

 明崎はツンと唇を尖らせると、自分もリンゴを食べ始めた。シャリシャリと同じような音が聞こえてきたが、他人が食べると美味しそうに聞こえるのは何故だろうか。

「うまいわー」

「見舞い品をアンタが食べてどうする」

「これ買ったん俺やし。こいつの末路は俺が決める」

「何をまた……」

「やっぱ食べたい?」

「いらん」

「ごめんって、もうせぇへん。ほい」

 今度はフォークごと渡してくれた。

「……なぁ、俺はこれからどうなるのだ」

「どうもならんよ。明後日帰ってきていつも通り学校通って、卒業までおるだけ」

「今回の件で何か特別な措置を取られることもないんだな」

「いやまぁ、笠原が悪い訳ちゃうし」

 伊里塚君は厳重注意やったけど。

 ただ、敢えて言うなら……。と明崎は続ける。

「そろそろお友達申請を受理して頂きたいんですが」

「友達……?」

「うん、君と俺。お友達」

 笠原が黙り込んでしまった。

 ……ん?

 ……あれ? 不満?

 あと何かあったっけ? 心当たりが無いんやけど。

「………」

「………」

 笠原が、全然答えてくれない。

 え、考え込まんといてよ。そんなに俺とお友達、嫌?

「………………」

「………………」

 ――何で無反応!?

 マジで!? えっ、ちょっ……うっそキツくないその展開! 立場無いんやけど俺!

「……ホントにいいのか?」

「へっ?」

「こんな……俺で。今まで散々嫌なことしてきたのに。それに俺と話したところで、面白くないぞ」

「……あぁ、何だ。そういこと」

「そういうこと、って……それが何なのだ」

「笠原はさ、俺のこと好き?」

「はっ?」

 唐突な問い掛けに笠原は面喰らった。

「好きか嫌いか。どっち?」

「どっちって……」

 明崎は笑みを絶やさず、しかし笠原を真っ直ぐ見つめている。

 ……嫌いになる訳が無い。

 こんな俺を助けてくれて。

 こんな俺でも受け入れようとしてくれて。

 いつも、笑いかけてくれて――

「……す、好きだ」


 好きにならない訳――ない。



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