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4


 その後しばらく、明崎は笠原の浅い呼吸を聞きながら、片手で頭を撫で続けた。笠原の身体から力を抜けるのを感じる。

 気持ちが収まったからか、泣き声が止んだ頃には、笠原の顔に浮かぶ疲労の色はますます濃くなっていた。

「もうちょい辛抱してや」

 笠原は無言でコクリと頷いた。その瞼は既に閉じかかっている。余程疲れたのだろう。

 ……あー、伊里塚君早よ来うへんかなー。須藤と一緒に来るらしいけど。そう思った時だった。

「でぇえ! なんじゃこりゃぁ!」

「おい、あそこにもぶっ倒れてやがる!」

 何と新たに三人のチンピラ仲間が駆け込んできた。しかも一人、金属バットを持っている。

「うげっ!」

 明崎は仰天して跳ね起きた。

 増援とか聞いてへんし!

 ちょっ……水、水! カムヒアお水っ!

 明崎が水の大玉をイメージしようとした矢先、笠原がついに意識を失った。

 その瞬間、男たちを拘束していた水も、明崎の脳内の水玉もバシャッと床に落ちて、弾け飛んだ。

「へっ――?」

 明崎の素っ頓狂な声が倉庫に響き渡る。

 え、うっそ。このタイミングで……?

 このタイミングでっ!?

「わ、あ……あああ」

 たちまちにして茫然自失になりかける明崎。

 説明しよう。例え半径十メートル以内に能力者がいても、能力者の意識が無い時はコピーが使えないのだ。

 つまり、笠原の能力は使えない訳で――

「ぅおりゃああああ!」

「でやぁああああっ!」

 向こうは向こうでこちらの事情など御構いなしに迫って来ている。拘束から解かれた奴も含め、計六人。ジャックナイフを取り出した奴もいる。

 明崎の口がO字に開いた。形容するなら、そう。

「ムンクの叫び」である。

「……Noォオオオオオッ‼」

 全速力で突っ込んで来る男を前に明崎は悲鳴を上げた。

「ぎゃあああああーー!」

 悲鳴を上げながらその男のシャツの襟元と右の二の腕を引っ掴んで引き寄せた。

「――うりゃあっ!」

 流れるように背中に滑らせるや豪快にバァンッ! と床に叩きつけてしまった。

 ……しん、と沈黙が降りる。

「……あら?」

 ……もしかして俺。背負い投げ、した?

 思わず拍子抜けしてしまった明崎。無論初めてである。やり方なんて教科書でチラッと図解付きで読んだだけなのだが……

 多分、コピー能力の恩恵だろう。

 こんな場面でも使えるとは……我ながら何つー都合の良い能力!

 げ。背負い投げしやがったアイツ! と他の五人は慎重に間合いを取り始める。が、それも束の間。すぐに明崎に襲いかかってきた。

「わぁあああっ」

 もうこうなったらやるしかない!

 泡を食って、まず手近な一人に向かった明崎は間合いを詰める。相手はすぐさま拳を振り回したが明崎は素早く避け、次の瞬間には明崎の拳が男の顔面にめり込んだ。

 向こうが驚く間もなく鼻に衝撃が走り、前歯が折れた。鼻血も出しながら男は悶絶し、床に藻掻き倒れた。

 さらに別の男がバットを持って襲い掛かってきた。咄嗟に振り上げられた腕を片手で無理矢理引き下げると、男の顔面を掴んで力いっぱい向こうに突き飛ばした。

 男は綺麗に背中から回転して頭を床にぶつけた。

 もう二人襲いかかってきた。飛び出す明崎。一人に殴りかかったが、男は拳をブロックしてすかさず殴り返してきた。

 避けようと首を左にやろうとしたら、そちらからもナイフが突き出されていた。


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