4
「笠原!」
走り寄った。
何ということだろう。手足がガムテープで拘束されている。まず手のガムテープを剥がしにかかりながら、身体の様子を見た。満身創痍といったところで、裸の上半身の至る所に痣ができていた。
それに背中には、鱗の代わりに紅く肉が見える箇所が幾つもあった。鱗を無理矢理剥がされたのだ。新たに血が滲み出ている。
「……あ、き……」
か細い声が、聞こえた。
ハッとして明崎は笠原の顔を覗き込む。
「笠原! 聞こえる!? 大丈夫!?」
笠原は薄っすらと目を開いているが、こちらを見ていない。
「こんなん、酷すぎる……」
呼吸もほとんどしていないように見えるくらい、弱々しい。これはかなりまずい。想像していた以上に、まずい。
「キリオ君も須藤もおるから、救急車来るまで待ってや!」
手のガムテープを剥がし終えると、続いて足の方にも取りかかる。手首が青紫に鬱血していた。
「どの姿勢が楽なん? てか動かして大丈夫?」
「……いい。このま、まで」
「寒ない? えっと、俺のシャツで良ければ」
明崎は自分の制服のシャツを脱いで、笠原の上半身に服をかけた。
海水に飲み込まれたお陰で、意識がほんの少しだけハッキリした笠原は、言われてみれば、とぼんやり思う。
いくら水の中で一生生きられるとはいえ、さっきまで夜の冷たい海水に浸かっていた。今は冷えた夜風に晒されている訳で。
急に寒気が背筋を走った。身体が小刻みに震える。
「辛かったら言ってや、何か……とにかく考えるから!」
赤いTシャツ姿になった明崎はおろおろした表情で言った。刹那、
「ざっけんな……この野郎」
後ろで、よろよろと男が立ち上がった。その瞬間スイッチが切れたように明崎の顔から、ふっと表情が消える。
「……あ?」
明崎は立ち上がって、近づいてくる男に向き直った。
「何やねんお前」
「テメェその化け物の仲間かよ」
「化け物? 誰のこと言うてるん?」
チンピラ相手に全く物怖じしないどころが、鋭く見返している。声の温度がどんどん下がっていっている。
「こんの……化け物共」
「なぁ……もっぺん聞くわ。誰が化け物やって?」
「テメェ等だっつってんだろぉ!」
逆上した男は身体を左に捻って拳を振り上げた。




