表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/197

4

「笠原!」

 走り寄った。

 何ということだろう。手足がガムテープで拘束されている。まず手のガムテープを剥がしにかかりながら、身体の様子を見た。満身創痍といったところで、裸の上半身の至る所に痣ができていた。

 それに背中には、鱗の代わりに紅く肉が見える箇所が幾つもあった。鱗を無理矢理剥がされたのだ。新たに血が滲み出ている。

「……あ、き……」

 か細い声が、聞こえた。

 ハッとして明崎は笠原の顔を覗き込む。

「笠原! 聞こえる!? 大丈夫!?」

 笠原は薄っすらと目を開いているが、こちらを見ていない。

「こんなん、酷すぎる……」

 呼吸もほとんどしていないように見えるくらい、弱々しい。これはかなりまずい。想像していた以上に、まずい。

「キリオ君も須藤もおるから、救急車来るまで待ってや!」

 手のガムテープを剥がし終えると、続いて足の方にも取りかかる。手首が青紫に鬱血していた。

「どの姿勢が楽なん? てか動かして大丈夫?」

「……いい。このま、まで」

「寒ない? えっと、俺のシャツで良ければ」

 明崎は自分の制服のシャツを脱いで、笠原の上半身に服をかけた。

 海水に飲み込まれたお陰で、意識がほんの少しだけハッキリした笠原は、言われてみれば、とぼんやり思う。

 いくら水の中で一生生きられるとはいえ、さっきまで夜の冷たい海水に浸かっていた。今は冷えた夜風に晒されている訳で。

 急に寒気が背筋を走った。身体が小刻みに震える。

「辛かったら言ってや、何か……とにかく考えるから!」

 赤いTシャツ姿になった明崎はおろおろした表情で言った。刹那、

「ざっけんな……この野郎」

 後ろで、よろよろと男が立ち上がった。その瞬間スイッチが切れたように明崎の顔から、ふっと表情が消える。

「……あ?」

 明崎は立ち上がって、近づいてくる男に向き直った。

「何やねんお前」

「テメェその化け物の仲間かよ」

「化け物? 誰のこと言うてるん?」

 チンピラ相手に全く物怖じしないどころが、鋭く見返している。声の温度がどんどん下がっていっている。

「こんの……化け物共」

「なぁ……もっぺん聞くわ。誰が化け物やって?」

「テメェ等だっつってんだろぉ!」

 逆上した男は身体を左に捻って拳を振り上げた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ