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「IDとパスワードって……何の?」
霧ヶ原が後ろから覗く。
「ikloudのヤツやって……やっぱり伊里塚君待つしか」
「あ、それなら僕のスマホに入れてるかも……」
「「へ」」
ポロリと爆弾発言が降ってきた。
「ホンマに!?」
「うん。ちょっと待って……」
霧ヶ原は巧みな指さばきでスマホを高速操作する。
「あった」
うわぁー……、と思わず明崎と須藤は顔を見合わせる。
今はめちゃくちゃ有難い、けど……!
「……キリオ君、つかぬ事を聞きますが」
明崎は霧ヶ原のスマホを受け取りながら聞く。
「はい」
「俺らの分もあるん? これ」
「あるよ?」
ぅわぁあああ。
聞かなきゃ良かった! ホンマ聞かなきゃ良かったわ!
明崎は内心叫びつつ、自分のスマホでIDとパスワードを入力していく。
「これで……行け!」
送信ボタンを押した。ページが変わった。マップが出た。
海沿いの道路を表す灰色の線に……赤い丸印があった。
「いたー!」
「よっしゃあ! よくやった明崎っ!」
「良かった! 良かったぁー!」
三人の中でブワッと歓喜が押し寄せ、喜びのあまりお互いの背中をバンバン叩き合った。
「で、ここどこ」
「ちょっと待ってやー……って、アレ?」
赤い丸印は確かに笠原の現在地を指している。
――ただし時間表示は十八時三十三分とあった。つまり今から十分前の現在地を指していたのだ。
「……どゆこと」
見出しには『リアルタイムで現在地を更新』とあるのに。そう思ってふと、マップ画面の枠下に目を移した瞬間。
『現在電波の繋がらない所にあるか、電源が入っていない可能性があります』と、小さく赤字の表示をされた文を見つけてしまった。
「………………」
程なく、他の二人もそれを見つけた。三人共、言葉も継げずに固まった。




