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「え……これ拉致られてんちゃうん!? 水で車ひっくり返そうとしとるし!」

「はっ!?」

 須藤はぎょっと目を見開いて明崎を見た。

「ちょ、ちょっと待てよ! 拉致られてるってどういうことだ、何が見えた!」

「ナイフちらつかされてる……!」

 霧ヶ原の言葉に、須藤は絶句してしまった。

 霧ヶ原はさらに告げる。

「何か鼻に当てられた。あ……やばい笠原君気絶した」

「ちょぉおアカンアカンッ! 行こや! 行かなアカンやろっ!」

 気絶したということは、そこから先を視ることができないということだ。

「場所分かるか」

「とりあえず車で連れ去られた現場までなら」

「行こう!」

「そこからだな……」

「もしかしたら犯人たちの記憶が視えるかもしれない」

「連れ去られた場所ってどこ?」

「駅前に行く道路分かる? 行く道二つに分かれるトコ」

「そんな近くで!? 十分もありゃ行ける場所じゃねぇかよ」

「もう何だっていいから早よ行こって!」

「分かってるっつのうるせぇな! ……俺に掴まれ。行くぞ」

 須藤の腕を二人はそれぞれ掴む。

 次の瞬間には、三人の姿が忽然と消えた。



 家から西に歩いて十分くらいの距離にある三叉路。三人はそこに姿を現した。

「……何も手がかりねぇや」

 須藤が溜息混じりに言う。現場とはいえ、何か物が落ちているとか、ましてや血の跡がある訳でもない。何事も無かったかのように、いつもの三叉路だ。

「……どうするよ」

「ごめん、まだ何も記憶が飛んでこない……」

「だろうな」

 明崎は三叉路をじっと眺める。本当に見れば見るほどいつもの三叉路だ。

 間違い探しは九十九.九%不可能。

 ここで笠原が連れされたという出来事以外には何も残っちゃいないし、どこも変わっちゃいないのだ。

 まぁスマホや血が落ちていたら、それこそ大騒ぎだが。

 ……ん? スマホ。

「GPS!」

 明崎は思いついた。

「スマホのGPSで探したらええやん!」

「お前やり方分かんの?」

「……分からへん。あ、でも! 伊里塚君なら俺らのスマホ情報把握してんちゃうの!?」

「それだ!」

 伊里塚は観察員だし、万が一の為にその辺を備えているかもしれない。

 早速霧ヶ原が連絡を入れる。

『――ナニ?』

「あ、良かった繋がった! 今、笠原君が車で連れ去られて、それで」

『うん。……うん』

「先生なら笠原君をスマホのGPSで探せるんじゃないかと、」

『そうかそうか、うん。……で、ちなみにこれ、


 留守電だから。ピーッの発信音の後にメッセージお願いしまーす』



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