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3


 ――キーンコーンカーンコーン

「うぉっ、もうそんな時間!」

「お前らさぁ……いい加減上がれよ」

 ずっと蚊帳の外だった須藤はうんざりした顔でため息を吐く。

「何で俺を連れてきた」

「そりゃあこういう時の為の須藤君ですから?」

「このカスまじムカつく」

「とか言うても連れてってくれるやろ? 何だかんだ」

 明崎のふざけた態度に再度ため息を吐く須藤。

「……とりあえず、笠原早く上がれ」

「あ、あぁ……」

 促されて、笠原が先に上がる。続いて縁に手をかける明崎だったが――須藤の手が明崎に触れた。

「んぎゃっ」

 ザブンッ!

 次の瞬間、明崎は再び溜池の真ん中へ吹っ飛ばされていた。ぎょっとする笠原の隣で須藤が「はっ」と鼻で笑った。

「ちょっとは困れ」

 須藤が笠原の肩に手を置く。それで笠原は思い出した。

 そうだ、この人はテレポートを使えるのだ。

「じゃな」

 呆然とする明崎の前から、二人が消えた。

「……わー」

 服どーしよー。

 途方に暮れた明崎の頭上で、授業開始のチャイムが鳴る。



「明崎は?」

「失踪しました」

「あ、そう」

 伊里塚は相変わらずの気怠い態度で、明崎の失踪事件をあっさりスルーした。

「失踪しました」って……池に落としたのはアンタだろう。

 須藤は何食わぬ顔で授業を受けている。無論、明崎を気にした様子は無い。

 あの人……大丈夫だろうか。

 今頃ずぶ濡れのままでどこか彷徨っているのでは――

 ガラガラスパァーンッ!

 物凄い音で前方の引き戸が開いた。クラス一同が仰天して凝視する中、ゼーゼー肩で息をする生徒が一人。

「お、出た」

 数式を書いていた伊里塚は特に驚いていない。

「やーすんません、伊里塚君……。ちょっと、池に、落ちまして」

 明崎だった。

「嘘吐け。服も髪も濡れてねぇじゃねぇか」

 伊里塚の言った通り、制服も髪もしっかり乾いている。

 なるほど。

 明崎は近くまで来てから、笠原の能力を使って水を全部取り払ったのだろう。本当にちゃんと使いこなせるのだな、と思わず場違いな感心をしてしまう。

「え……あぁー!」

 一方明崎は指摘されてハッとした様子で髪を触ってから――絶叫。叫びながら髪を掻き回す姿は、傍から見るとただの馬鹿である。

「しまった。くぅーっ!」

「何が『しまった。くぅーっ!』だ、バーカ」

 宿題、追加な。

 伊里塚が一言言うと、明崎は灰と化した。

「須藤、後で覚えとけ」

「ざまぁー」

 忌々しげな顔を作ってすれ違う明崎に、須藤がまた意地悪く鼻で笑った。



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