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「もーホンマびっくりするわ。窓見たら君絡まれとるしキリオ君に突撃命令出されるし。……会長に何やらかしたん?」
「別に……ただ、」
階段を降りながら明崎がぼやくと、笠原がとんでもないことを口にした。
「生徒会の補佐に誘われて、断った」
「ホンマにやらかしよった」
「爆弾発言だなー。それ」
どうりで親衛隊が絡んでくる訳だ。
「ならば入れば良かった、とでも?」
憮然と言葉を返す笠原。その問いには須藤が答えた。
「そーは言わんが、正しい正しくないの問題じゃないからな。……もちろんお前が好きで起こした訳じゃないのは分かるぜ? けど、どっちに転ぼうが嫉妬僻みやっかみの嵐は避けられないだろーな」
淡々とした口調に変わりないが、さりげなくフォローを入れている。
「むしろ空気になろうとしてたしな。マジ同情するわ」
全くその通りである。そもそも笠原は完全なる被害者だ。
「と、いうことでだ。この流れで言うのもなんだが……もう俺らとつるんどけよ」
「え?」
笠原はびっくりした様子で目を見開いた。明崎もちょっと驚く。
この流れで……え、君この流れで? この強引展開捻じ込んじゃうの?
「とりあえず半端なヤツが手ェ出してくることは無い。まず俺が風紀委員だし」
「……まぁ確かに。変な通り名ついとるしな」
とは思いつつ、ノリでそのまま話に乗れるのが明崎である。
「うるせーよ」
「それに、キリオ君はあの通り副会長兼影の帝王やし」
「とまぁ、この辺がメンバーな以上空気になるのは諦めてもらうしかないけどな。もっと強烈なの(影の女王)もいるし。防空壕ぐらいには幾らでもなれるぜ」
須藤が言うと、普段の冷静さが物を言うのか不思議と説得力が増す。
「むしろ迎撃可能やんな」
「捻り潰してやんよ」
明崎がニヤリと笑うと、須藤も片方の唇を釣り上げて笑った。本当に言った通りになるかもしれない。そう思わせるほどに自信に満ちた表情であった。
「……それでも、アンタたちに迷惑をかけることに変わりはないだろう?」
しかし笠原は首を縦に振らなかった。
……そりゃあ、今までの反応から見てそうか。
「全っ然迷惑にならねぇよ。俺はそれが仕事だし」
「せやせや。頼ってくれたらええねん」
「なんなら試しに昼飯食うか? 一緒に」
「親衛隊はあっという間に息潜めるやろな」
「……悪いが、昼は」
「って君いつもどこいてるんよ? 気づいたらいっつも昼休みおらんし」
そうして話しているうちに、教室へ着いた。入った瞬間に予鈴が鳴ったので三人はすぐに解散することになった。
――そして昼休み。
例の如く、笠原は消えていた。
「……須藤君やい」
「何だ?」
「昼飯食ったらちょっと付き合ってくれへん?」




