飛んできた
「さっきから変なとこ見やがって。人の話を聞く時は相手の目を見るもんだろーがよ」
「や、そのっ……」
そうこうしている内に明崎は物凄い勢いで五人の背後まで距離を縮めている。もう目の前なのに止まる気配が無い。
「後ろっ……」
「はぁ?」
と、せっかく注意してやったのだが……
「にんげぇーん、ボーリィーーングッ!! とぅっ☆」
ドカッ!
「うわっ」
「ぐぇっ」
「うぎゃっ」
「がっ」
「ほぎゃっ」
遅かった。
笠原の目の前で五人がそれぞれ悲鳴を上げて、華麗にその場へぶっ倒れた。全員がバタバタと無様に、それこそボーリングのピンのように。
「……スットラーイク。スコア何点?」
笠原は急展開のあまり、何も言えない……
明崎は勢いをつけて空中にダイブし、回転を加えながら真横になって五人の腰に猛烈なアタックをかましたのだ。
体操選手も真っ青の荒技である。
……どこでそんな技覚えた。
「よっこらせ……」と五人の上に寝転がった状態から立ち上がって退けた明崎。だがヨロッと身体が危なっかしく傾いだので、笠原が慌てて駆け寄る。
「だ、大丈夫か」
「〜〜〜ッッ……あ、ちょ、腰。腰オワッタ。死ンダ」
荒技なだけに、一番ダメージを受けたのは全身強打した明崎である。
「ぐぬ……おのれ、明崎」
生徒Aが床にディープキスした状態から復活し、顔だけ起き上がらせた。
「文句ならキリオ君に言いよ……。『やれ』っつったんアイツやもん」
明崎が引き攣った笑い顔のまま、すっと指差した。
一同が釣られて見ると――向こうから我らが副会長、霧ヶ原がやって来るところだった。
「お役目ご苦労、明崎」
「俺を殺す気かしら」
「大丈夫。ガラスぶち破っても生きてたんだから死なないよ、多分」
「殺す気ですね」
「まぁまぁ、それはさておき」
と、笠原には謎の遣り取りをした後、霧ヶ原の笑みがふっと白けた。
……いや、黒い影が落ちた。
「生徒諸君。――つーか池上の取り巻きども」
その表情と同じくして白けた呼び声に、取り巻きたちがびくりと姿勢を正した。
「僕の友達候補に、一体何してくれたの?」
これだけで充分だった。取り巻きたちの表情は一斉に凍りつき、見る見る顔が青ざめていく。
霧ヶ原はにこにこと顔は崩さないまま、判決を言い渡した。
とりあえず、生徒指導室まで行こうか?
後から来た須藤に伴われ笠原と明崎が脱出した直後、渡り廊下から阿鼻叫喚の叫びが響き渡った。




