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5

 明崎はソファーに押し倒されたまま須藤に続けた。

「ただ本人がこの通り背中をめっちゃくちゃ気にしよるからな、一遍俺が半裸で出たろか言うててん」

「それじゃただの変態だろ」

「変態とは動機がちゃう」

「あっそ。……それで、お前の背中に何かしらコピーが為されたんだな」

「そゆこと」

「………」

 笠原はぽかんとした顔で二人の遣り取りを見ている。

 もう話の展開に追いつけていない感じだ。それに気づいて明崎が説明する。

「須藤とは前から君のことで話しとってん。何の能力持っとんのかなぁって。須藤、君のこともさっき笠原さんにチラッと話してん」

「セカンド・チャイルドのことも?」

「うん。でな、笠原さん。この人よう行方不明になんねん」

「うるせぇ」

 明崎はケラケラと声を上げて笑った。

「近々他のメンバーも教えるわー。ウチは人数集まっとるからな、笠原さんの気持ち分かるヤツもおるはずやで」

「変わってる奴も多いけどな」

「君もや」

「お前に言われたくねぇー」

「まぁそういうことで。俺はココにおることを勧めるわ。それと……そろそろ上から退いてもらえると有難いんやけど」

「あ」

 笠原は自分が明崎の上に乗っていたことを、すっかり忘れていたようだ。慌てて身体から降りてくれた。

「すまんっ……!」

「いえいえ。中々良い景色やったわぁ。……ご馳走さんです」

 やっぱ顔が綺麗やしな。悪い気せぇへんわ。

「おい」

 須藤が起き上がった明崎の頭をどやしつけた。



「……さっきは、すまなかった」

 須藤が二階へ戻った後、笠原が唐突に謝った。

「風呂の時? あれは俺もごめんやで。急に入ったりして、すんませんでした」

 これからはノック必須やな。

「……で、あれは考え直してくれたん?」

「何を?」

「出て行く話」

 すると、笠原は困ったように視線を彷徨わせた。

 これで出て行くとか言われたらどうしよう。固唾を飲んで見守っていると、やがて答えた。

「少し考えさせてくれ」

 笠原としては、複雑だった。

 ここに今、体を張ってまで理解しようとしてくれる人がいる。初めてだ、こんな人。

 だからこそ……怖くなった。

 さっきだって水が飛び出すのを止めることはできなかったのだ。もしこの人を何かの拍子で傷つけることになったら――

「んーまぁ、時間は幾らでもあるし気ィ済むまで考えてくれたらええけど、俺は出てくの反対なんで。晴れて背中仲間やしな。能力のことは気ィ向いた時に話してくれたら、そんでええ」

「……いいのか?」

「義務ちゃうしな」

 と、明崎は肩を竦めた。

「……分かった」

「よーし」

 これで明崎の意思は伝えた。後は笠原が答えを出すだけである。……結構明るい兆しなんちゃうかな、これ。

「あ、それとさ」

 明崎は思いついて笠原に聞く。

「お互いさ、もう呼び捨てにしてもいい? ……さん付けちょっと苦手やねん」

「……お好きに」

 その後、二人は二、三言交わして自分たちの部屋に戻った。


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