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明崎はソファーに押し倒されたまま須藤に続けた。
「ただ本人がこの通り背中をめっちゃくちゃ気にしよるからな、一遍俺が半裸で出たろか言うててん」
「それじゃただの変態だろ」
「変態とは動機がちゃう」
「あっそ。……それで、お前の背中に何かしらコピーが為されたんだな」
「そゆこと」
「………」
笠原はぽかんとした顔で二人の遣り取りを見ている。
もう話の展開に追いつけていない感じだ。それに気づいて明崎が説明する。
「須藤とは前から君のことで話しとってん。何の能力持っとんのかなぁって。須藤、君のこともさっき笠原さんにチラッと話してん」
「セカンド・チャイルドのことも?」
「うん。でな、笠原さん。この人よう行方不明になんねん」
「うるせぇ」
明崎はケラケラと声を上げて笑った。
「近々他のメンバーも教えるわー。ウチは人数集まっとるからな、笠原さんの気持ち分かるヤツもおるはずやで」
「変わってる奴も多いけどな」
「君もや」
「お前に言われたくねぇー」
「まぁそういうことで。俺はココにおることを勧めるわ。それと……そろそろ上から退いてもらえると有難いんやけど」
「あ」
笠原は自分が明崎の上に乗っていたことを、すっかり忘れていたようだ。慌てて身体から降りてくれた。
「すまんっ……!」
「いえいえ。中々良い景色やったわぁ。……ご馳走さんです」
やっぱ顔が綺麗やしな。悪い気せぇへんわ。
「おい」
須藤が起き上がった明崎の頭をどやしつけた。
「……さっきは、すまなかった」
須藤が二階へ戻った後、笠原が唐突に謝った。
「風呂の時? あれは俺もごめんやで。急に入ったりして、すんませんでした」
これからはノック必須やな。
「……で、あれは考え直してくれたん?」
「何を?」
「出て行く話」
すると、笠原は困ったように視線を彷徨わせた。
これで出て行くとか言われたらどうしよう。固唾を飲んで見守っていると、やがて答えた。
「少し考えさせてくれ」
笠原としては、複雑だった。
ここに今、体を張ってまで理解しようとしてくれる人がいる。初めてだ、こんな人。
だからこそ……怖くなった。
さっきだって水が飛び出すのを止めることはできなかったのだ。もしこの人を何かの拍子で傷つけることになったら――
「んーまぁ、時間は幾らでもあるし気ィ済むまで考えてくれたらええけど、俺は出てくの反対なんで。晴れて背中仲間やしな。能力のことは気ィ向いた時に話してくれたら、そんでええ」
「……いいのか?」
「義務ちゃうしな」
と、明崎は肩を竦めた。
「……分かった」
「よーし」
これで明崎の意思は伝えた。後は笠原が答えを出すだけである。……結構明るい兆しなんちゃうかな、これ。
「あ、それとさ」
明崎は思いついて笠原に聞く。
「お互いさ、もう呼び捨てにしてもいい? ……さん付けちょっと苦手やねん」
「……お好きに」
その後、二人は二、三言交わして自分たちの部屋に戻った。




