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3週間後


 〈LIMEにて〉

明崎:須藤ー、もう無理ー(´;ω;`)

明崎:もう無理やって無理、無理無理無理無理無理

須藤:さっきから通知うるせぇと思ったらお前か

明崎:だって。アイツ全っ然喋らへんし表情動かへんし目ェも合わせてくれへんしどないしたらええかホンマに分からん。・゜・(ノД`)・゜・

須藤:いつものことだろ。何を今さら…

明崎:もう三週間も経つねんで! ええ加減話しかけて来てくれたってええやんか!

須藤:いつものことだな。

明崎:毎日朝早く出て、帰ってくるなり部屋に引き籠られんねんで! 徹底的に避けられんねんで!やりにくいったら無いわ!

須藤:あーはいはいはいはい

明崎:( ゜д゜)……いよいよ絶望的やわ。

須藤:それより今回のテストの方が重大だわ

明崎:……何すか、もう

須藤:笠原がオール満点なのは、一体どういうことだ

明崎:はぁ

明崎:……は?

須藤:いや、「は」じゃなくて。

明崎:ウエェエエッ!?∑(゜Д゜) 100点!? はっ!? 何それ100点とか! 馬鹿じゃん!

須藤:いやいやいや、馬鹿って。つーかお前も取ってんだろが

明崎:何をよ

須藤:……は?( ゜д゜) え、嘘だろお前。

明崎:え、待って、何?

須藤:お前もオール満点だったろ

明崎:ん?

明崎:……嘘やん。それガチで言うてる?

須藤:何でお前が知らねぇんだよ。ホント信じらんねぇ

明崎:だってあんま気にしたことない

須藤:あーくそこいつ腹立つわー。口ん中にわさびぶちまけてやりてぇ

明崎:やーい脳筋やれるもんならやってみろー

須藤:そのつもりならその件は家でじっくり話してやるけど

明崎:あー待って待ってすいませんでした脳筋取り消しますすいませんでした

須藤:……まぁいいわ。

須藤:なんか風紀でも騒ぎになってるもんでな。2人でカンニングしたうんぬん言われてんぞ。

明崎:え。

須藤:っつってもその様子じゃな…。とりあえずお前は違うってことだけ言っとくわ。じゃあな

明崎:あ、ちょっと? もしもーし?

明崎:おーい!



 笠原が転校してきた二週間後に、テストが行われた。

 七教科七〇〇点満点である。

 学校の偏差値は中の上程度なのに問題内容が容赦ないし、赤点を取ったらさらに容赦ない補習も待ち構えている。夏休みは無事に家へ帰りたい生徒たちは、死に物狂いで勉強するのである。

 そしてその一週間後――つまり今日、テストの結果が出た。各学年上位三十名の名前が食堂前に貼り出された訳だが――

「嘘っ。ちょ、笠原って。あの転校生?」

「詐欺だろあの点数」

「いやぁああっ、会長様が!」

 転校して早々、笠原がなんと堂々の一位に名乗りを上げていた。彼の名は常に首席争いをしていた生徒会長や副会長すらあっさり飛び越え、しかも今回一位になるはずだった副会長さえ総合六九五点のところを、笠原は七〇〇点満点と嘘のような数字を叩き出している。

 副会長を超えてしまっただけでも一大事だが、この点数のせいで大変な騒ぎとなっている。

 カンニング説やら多額の寄付金を払っているなどなど。

 ただ笠原は相変わらず他人と馴れ合わず、隙あらば失踪するので、誰も真相を突き止められず根拠のない噂ばかりが飛び交う。

「明崎まで……」

「あ、つかあの二人同じトコ住んでんじゃん!」

「スゲぇ、天才の館か」

 ちなみに明崎も、普段は十~二十位をうろついているのが、何故か謎の七〇〇点満点を取っていた。


明崎:もしもーし!

明崎:帰ってこーい!!

明崎:……あー。


 スマホのLIME画面が動かない。須藤から返事が来なくなった。

「……うわ。うわぁー……」

 明崎は頭を抱える。最初事情を飲み込めなくて、ついあんな反応をしてしまったが。実を言うと、心当たりは大いにあった。



「二人してカンニングか」

「や、カンニングにしたってあの点数は無理だろ」

「席も結構離れてるしなぁ」

 こうして生徒たちが面白半分に談義しているところを、近くの階段から眺める者が一人いた。背が高く、十人中十人が「爽やか系アイドル」と答えるであろう甘い顔立ちの生徒。

 益田 敬介。生徒会の会計である。

「………」

 特に何の感慨も持った様子は無く、黙ってその場を立ち去った。

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