登校初日・須藤の昼休み
「須藤のクラスに転校生来たんだってな」
「家も俺らんとこだぜ。ぜってー何かあるわ」
「うわ怖ぇー。風紀と一緒って四六時中監視じゃん? 可哀想」
「んな暇じゃねぇから」
食堂近くで互いを見つけた須藤と柳田はそのまま連れ立って食堂へ入った。柳田はバスケ部のエースである。
「バスケ部のミーティングは? 今日はねぇの?」
「しないってよ」
「ふーん。で、何食う?」
「親子丼。特盛」
「決めるの早ぇ。……じゃあ俺、塩ラーメン」
「お前こそ早いな」
「ラーメン全メニュー制覇期間なんでな」
「って三種類しかねぇじゃん」
勝気そうに釣り上がった眉に、大きめの鋭い目。睨むとたちまち凄みを増すがスッキリとした顔立ち。いかにもスポーツ少年らしいしなやかな身体に動作の一つ一つにも無駄が無く、機敏だ。
「あー……眠ぃ」
ふぁっと欠伸を洩らす柳田は、普段滅多に食堂を利用しない。その為、
「あ、柳田がいる」
「えっ、どこどこ……あー! 何だ、飯誘えば良かった」
「柳田さん……カッコいいな」
珍しいし有名だし見られる顔なので、周囲の視線を集める
――ただ、どうして声はかけられないのかというと。
「ひぃ! HSF!」
「お前バカ! 魔族長と一緒じゃねぇか!」
「やばいって、今特攻隊長と目ェ合ったら殺されるぞ」
「くっそう、あの運動部破り……柳田を独り占めしやがって」
須藤のせいである。
「HSF(ハイスペック風紀)」「風紀の特攻隊長」「運動部破り」「魔族長」……
これらは全て(勝手につけられた)彼の異名である。
決して穏やかではないそれらを並べるくらいには、色々とやらかしているのだ。
食券を買っておばちゃんに手渡した二人は、お冷片手に近くの席に着いた。
「次休みいつ?」
「今週の土曜」
「今週か」
明崎駆り出したら今週いけるな。氷入りの水を飲みながら、当然のように明崎をこき使う選択をする。
もちろん明崎は風紀委員ではない。




