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登校初日・明崎の午前


「お前ん家の侍君、どうよ」

「どーもこーも。全然喋らへんし、めっちゃシカトされるし。須藤と昨日放っとこかって話も出たぐらいやで。……ってかその侍君って、何」

「あだ名」

 八時十分。

 明崎は伊里塚に職員室まで呼びつけられていた。無論、笠原のことである。

「まー取っ付きにくいだろうな。あの感じじゃ」

「取っ付きにくい以前に人間関係の構築放棄してんで。無理やわあんなん……」

「そこを何とかすんのがお前でしょうよー。その為にそっちやったんだから」

「ぅおい担当。アンタが他人事でどーすんねん」

「あくまで最終責任者だからな。実害がない限り生徒間の関係どうこうまでは俺の知ったこっちゃねぇよー」

「サボリ魔」

「とーにーかーく。俺はお前のコミュニケーション能力を高く買ってる訳。まぁ侍君がこの一ヶ月でどうにもならなかったら、他に手立てを考えるさ」

 そう言われてしまっては、文句の言いようがない。

 ……一ヶ月で何か変わるもんかな。

「努力はしてみるけど……何か考えといてや?」

「おー」

 絶対考えへんわこの人。

 あーあ、と明崎は遠い目で笑った。



 朝のHRで笠原が紹介されると、2‐Aは大いに沸き立った。予想通りである。

 休み時間には朝の騒ぎを聞きつけた他クラスの生徒たちが野次馬となりガラス越しにわらわらと押し寄せた。予想通りである。

 笠原の情報はあっという間に学年中を駆け巡り。今、笠原の周りには好奇の目を隠さない調子の良い連中が、我先にと押し合いひしめき合っていた。

 六人、七人……あ、ちょうど十人おるわ。予想通りである。

 そして当の本人は、

「笠原さんって彼女いんの? いないんだったらさー、マジで俺と付き合おう!」

「ってかホンット顔綺麗だなー。奏プロから声かかるんじゃね?」

「笠原さん部活入るの?」

「LIME交換しようよ!」

「……すまん、聞き取れなかった」

 怒涛の質問責めを前に、スルースキルは尚健在である。

 見事なまでに予想を裏切らない男、笠原。

 にやにやしながら、自分の席で遠巻きに眺める明崎である。

「見てるだけでオモロイな、アレ」

「すげぇな。揉みくちゃだな」

 前の席に座る須藤も一緒になって傍観する。最初は逃げたそうにしていた笠原だったが、二限三限と授業を重ねるに連れ、諦めて受け答えするようになっている。

 本人は空気になりたいだけなのだろうが、周囲が放っとかない。

「そらぁ、あんだけ美人やしなぁ。もうちょいしたら行ったろー」

「拷問かよ」

「拷問て」

「あいつアレで嫌気差してんだぜ?」

「えー。俺やったら最大限楽しむけどなぁ……。オモロ過ぎるやん、皆の視線が俺に集まるとか何そのアイドル展開。あのポジション代わりたい」

「うぜぇ?。こんなヤツ三分で興味失せるわ」

「カップ麺作れるやん! 俺ってばなんて実用的な男!」

「言ってろ」

 須藤に匙を投げられた。

 あ、ちょ、やめてその冷ややかな視線。

「でもどないしよっかなぁ。……物は試しで昼飯誘う?」

「でもお前避けられてたよな今朝」

「うーん……玉砕覚悟で」

「無理だろ」

「んにゃー、一人ムリやってー。須藤も来てよー」

 という訳で、お昼のお誘いを実行することになったのである。

 ――しかし昼休みになって、気づいた時には笠原が消えていた。

「はっ? アイツどこ行ったん!?」

「知らね。俺先に飯食ってるわー」

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