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「や、待ってって! 俺だけじゃ自信ないねん!」

「嘘吐け。日頃から色んなやつ懐柔しといてよぉ」

「俺かて得意不得意あるわ!」

「じゃあ諦めるんだな」

「いや、俺やからきっと軽いとか胡散臭いとか思われとるかもしれへんやん。けど須藤やったら風紀もやってて、評判は真面目で通ってるからイケる!」

「イケるじゃねぇわ」

 須藤は明崎と同じクラスで、風紀委員を務めている。元々表向きの性格は堅い節がある上、人間関係において誠実な点がクラスメイトのみならず先生受けもいい。

 ……しかしそれはあくまで表向きの話。実際の須藤はワルである。いつの間にか授業をサボっていたり、不良を面白半分に追っかけ回したり、家では入手ルート不明の酒を毎晩煽り挙句には――いや、これ以上言わないことにしよう。

 とにかくこいつは表と裏のギャップが激しいのだ。

「どんなやつか分からん以上、俺からは関わらない。……お前もまるでいない風に振る舞えばいいものを。誰にでも平等に壁作りそうなタイプだと思うけど、ソイツ」

 ついでに言うと、他人の人間関係の問題には首を突っ込まない奴だった。つまり助ける気ナシ。まぁ、それは仕方ない。騒いでいるのは明崎だけだ。

「ああ、もう。……そうしよっかなぁ。何か面倒くさくなってきた」

「そうだ。とりあえず放っとけ」

「……いや、無理かも。気になる」

「あっそ。じゃあ勝手にしろ」

「いやー見捨てやんといて下さい須藤君あ待って閉めないd」

 バタンッ

 扉を閉められた。

 ……あー、逃げられた。

 そう思って肩を竦めた瞬間、再び開いた。

「うぉ、開いた」

「渡すの忘れるとこだった」

 エコバッグを手に帰ってきた須藤。中には弁当箱が二つ。

 あ……せや、食堂に寄るの忘れてたわ。

「おい。もう足突っ込むなよ。今度こそ潰すからな」

 須藤とは今度こそ別れた。真っ黒い階段を降りて、笠原の部屋へ向かう。襖は半分開いていた。

「笠原ー」

 部屋を覗くと、段ボールから衣服を出していた笠原が顔を上げた。

「弁当あるから、テーブルに置いとくで」

「……どうも」

 笠原はやはりにこりともせず、それっきり作業に戻ってしまった。

 ……早速、須藤の言う通りにした方が良さそうだと思わずにはいられない明崎である。

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