須藤が協力してくれない
――先程から一線どころか、三線も四線も引かれている気がする。やたら警戒心が強いが一体なんなのだ。もしかして初めから関わるつもりがないという、笠原の意思表示なのだろうか。
これから二年も一緒なのに? ……うわ、絶対嫌や。
「ぅおーい、すーとーうっ」
ということで明崎は二階に上がり、ある部屋のドアに声をかけた。
たっぷり十秒近く間が空いた後、ドアがゆっくりと開き、一人の男子が眠たそうな顔で出てきた。
「……何だ」
「何だちゃうし。今帰ってきたん?」
「あー……まぁ」
須藤なる男子は頭をバリバリ掻きながら、くぁっと欠伸をした。スポーツ刈りに精悍な顔つきをした背の高い男子。入学した時からこの家で一緒に過ごしていて、一番付き合いの長い友人である。
「で?」
「転校生来てん」
「……へぇ」
「何やねんその反応。驚くとかせぇよ」
「は? 興味ねぇし。つか用ってそんだけ? 帰れよ、寝るから」
「いやいやいや、閉めやんといて! ちょっと待てやーい」
閉められていくドアの隙間に、明崎は咄嗟に足を滑り込ませる。
――一拍遅れて「ガッ」と鈍い音がした。
「〜〜っ、……その転校生、笠原言うんやけど」
「え、おまっ……気持ち悪っ」
容赦無く足が潰されたことも、愕然とした須藤から放たれた一言も無視し、とりあえず笠原の言葉遣いや態度を、容姿について話した。
「めっちゃ警戒されとんねん。つーか……俺と元から関わるつもり無いって感じ?」
「放っとけよそんなの」
「嫌やってそんなん。これから二年やで? 考えられへん」
「知らねぇ~」
「ほんだら君教えたるわ?」
「いらん。帰れ」
須藤は真剣に話を聞いていなかった。一切タッチするつもりは無いらしく、その証拠に半ば本気で明崎を廊下へ押し出そうとしている。




