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はじまりは初恋の終わりから~  作者: porarapowan
番外編
76/77

76.花嫁の父の回想

 愛娘イリューリアが今日、嫁ぐ。


 この国、デルアータのアルティア大聖堂の控え室で娘の支度が仕上がるのをそわそわしながら待っていた。

 花嫁姿の娘の手を引き王侯貴族の招待客の中、大聖堂の広間を歩き祭壇で待つ花婿に手渡すのである。


 この国の第一王子ローディとの婚約を解消した後、娘はあの忌々しい魔女のような仮の妻マルガリータの呪いのせいで引きこもってしまい、自分自身にもすっかり自信をなくしてしまっていた。

 あれほどに美しい容姿にもかかわらず本気で自分をみすぼらしいと思っていたようで、学園に通うことすら拒んでいたのだ。


 ただそんな中でも自らを必死で良くしようと努力していた娘は痛々しいほどに健気だった。

 それなのに私はあんな女の呪いにかかり屋敷で娘を十分に守ってやることすら出来ずに…。


 自分自身も目くらましのような呪いにかかり、妻の死の真相を突き止める為の仮の婚姻にずるずると引きずられ、まるでミイラ取りがミイラになったが如き(てい)たらく…。


 後からその事実を知りどれ程娘や死んだ妻に申し訳なく思った事か…。

 我ながら情けなく娘にはどれほど詫びても詫びきれぬ。


 そんな時、あの伝説の国からの公爵家一家とともに現れた美しい青年が娘をあっという間に救ってくれた。

 ルーク聖魔導士その人だ!


 聖魔導士でありなんと後からわかったことだが彼はラフィリル王家の第二王子だった。

 王族にして魔導士!

 その持てる魔力故にであろう。

 聖なる国の聖なる魔導士の称号を持つ彼は聖なる魔法を操り娘や私にかけられた呪いを払ってくれた。

 そして娘はようやく自分自身が醜くもみすぼらしくもない事を気づいてくれて自信を取り戻すことができたのだ。

 彼は我ら親子の恩人である。


 それだけではない!

 わが宿敵でありこの国にはびこる諸悪の根源とも言えるデュロノワル一族とそれを取り巻く一派を一掃するのに多大なる貢献をしてくれた『()()()の恩人』でもある!


 私の中でもはや彼以上に愛しい娘を託すに相応しい者など考えられなかった。

 それは彼がかの()()()()()()()()()()()()からだ。


 彼の娘を見る眼差しは温かく慈しみに溢れていた。

 あの阿保王子ローディや馬鹿従弟ザッツなどの()めいた眼差しとは違う。


 正直、阿保王子と比べればザッツの方がまだ良いのではと思った時期もあった。

 王弟であり将軍でもあるザッツならば娘を守れるかと思ったが、彼を知れば王子も将軍ももはや論外だった。


 あくまでも娘を守ろうとし、なおかつ父である私や娘の祖国をも護ろうとする彼の桁違いの優しさとそれを実行できる力はもはや娘の婿どころかこの国の宰相である自分が主君にと崇めたいほどである。

(あ、これは現主君キリクア王には内緒である(笑))


 それは、この国の王キリクア・デア・アルティアータも思ったのであろう。

 イリューリアを王家の養女とし、ルーク殿に婿としてこのデルアータの次期国王になってもらえないかとキリクア王も頭を下げたほどである。

(それに関しては即、断られてしまったが…まぁ仕方がない。この上はまだ若いのだからキリクア王と王妃には頑張ってもう一人御子を作って頂いて…こほん…ああ、話がそれたな)


 ああ、そしてそんな彼が、我が娘を望んでくれた。

 むろん娘も…。

 彼なら私などより確実に娘を守りきってくれると私は信じている。

 何より娘が本当に嬉しそうだ。


 そんな事を考えていると娘付きの侍女ルルーが私を呼びに来た。

「旦那様、お嬢さまのお仕度が整いましてございます」

「おお!そうか!」

 隣の控室の扉が開かれる。


「ああ、イリューリア、我が娘よ!なんて綺麗なんだ」

 そこには夢のように美しく清らかな、そして幸せそうな娘の姿があった。


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