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女装少年は周囲の人間を無自覚にときめかせてしまいました

ここから第二部スタートです!


 ついに学生たちにとってもっとも長い期間自由に過ごせる夏休みが始まった。その休みの初っ端から龍太は早速恋人と共にデートを兼ねた買い物に付き合う為に街へと繰り出す。


 うぅ~やっぱりこの恰好で外を出歩くのは勇気がいるなぁ……。


 現在彼が歩いている場所は様々な大型店がいくつも並んでいる人通りの多い道だ。当然だが人通りの多い街中を歩いていれば何人もの人とすれ違っている事になる。外を出歩けば当たり前の現象だが今の龍太は自分の傍を人が通り過ぎるその都度に心臓がひと際大きく跳ねる。


 だって今の彼は傍から見ればまごうことなき〝少女〟にしか見えないような恰好をしているのだから……。


 まさかまたしてもこの恰好で外を出歩く事になろうとは……。


 今の龍太は頭の上には可愛らしいパンケーキの様な帽子に服装もガーリー系の物を着込んでおりどこからどう見ても可愛らしい女の子そのものだ。ちなみにすれ違う中で何人かの男性が龍太に振り返るがそれは女装している龍太がとても魅力的で愛らしいからだ。


 落ち着くんだ僕……誰も見てない、誰も見てない、誰も見てない……!!


 自らに自己暗示を掛けて必死に待ち合わせ場所まで辿り着くと既に愛美が先に到着して待ってくれていた。


 「もう遅いわよ龍太。約束の時間からもう10分も過ぎて……」


 「ご、ごめん。予定より早く出るつもりだったけどいざこの恰好で外に出るとなると勇気が出なくて……」


 本来であればもう龍太は先にやって来て愛美を待たせることなく約束よりも30分は早く到着していただろう。しかし妹のコーディネートがあまりにも恥ずかしく自宅から外に出るまで15分も経過してしまったのだ。その上にここに来るまで人目が少ない道を選んでやって来たので大幅に時間をロスしてしまったのだ。

 とは言えこの恰好で今日は買い物に付き合う事を約束したのは自分である以上はそんな言い訳は通用しない。そう思い頭を下げて謝るのだが急に黙り込んでしまった愛美に疑問を抱く。


 「……ごめん、いきなりすぎて思わず噴き出ちゃった」


 顔を上げればそこには鼻から真っ赤な液体を垂らすガールフレンドが居た。


 「……ティッシュ使う?」


 「あっ、大丈夫。こうなると予想して予め沢山用意していたから」


 そう言うと彼女はポケットティッシュを鼻に詰めるのだった。


 いやぁ…完全に油断していたわ。確か今日の龍太の恰好は涼美ちゃんのコーディネートだったわね。グッジョブ!!


 それからようやく落ち着きを取り戻した愛美は可愛らしい彼氏と共に大型のショッピングモールへと入って行く。

 

 「おいあの娘達かなりレベル高くね?」


 「片方は巨乳ツインテールの美少女、もう片方は小動物チックな娘、二人ともそれぞれポイント高いぜ……」


 すれ違った自分達と年の近い青年の言葉を耳にした愛美は心の中で鼻を鳴らす。


 ふん、まさか聴こえていないとでも思ってるのかしらね? ホント、男ってのは女の子を容姿だけでしか見ようとしないヤツばかりだわ。もちろん龍太は別だけど……。でも今の龍太に見とれてしまう気持ちだけは共感できるんだけどね……。


 手を繋ぎながら歩いてる隣の彼氏に目をやる。


 「うぅ~やっぱり大型店だけあって人が多いよぉ。お願いだから誰も僕の正体に気が付かないでぇ…」


 自分の正体がバレるのを恐れて自分の傍から離れないように引っ付く彼氏の姿に思わず口角が緩みそうになる。だってあまりにも愛らし過ぎるんだもの!!


 普段はツンツンしている愛美だが彼が女装している時だけは心なしかキャラ崩壊しかける傾向がある気がする。


 そして目的であった水着コーナーへと到着すると早速愛美は水着の吟味を始める。


 「ちょっと何をモジモジしてるのよ龍太?」


 「いやだって、女性ものの水着コーナーに居る男って僕ぐらいだから……」


 確かにこの店の水着の販売エリアは下着同様に男性と女性に区分されている。それ故に二人の今居る女性用水着のコーナーには龍太以外の男性客は見当たらない。こんな場所に男性が居れば間違いなく浮くからだ。しかし今の龍太も見た感じでは完全に女性にしか見えないので他の女性客から特に奇異な目で見られる事はない。だが注目は浴びているようだ。


 「ねえねえあの娘なんか小動物みたいで可愛くない?」


 「分かる~ちょっとキョロキョロしながら震えて子犬みたい」


 な…何だか他の女性客に見られている気がする。も、もしかして僕が男だってバレている?


 「ご、ごめん愛美。やっぱり僕外で待って居た方が……」


 「ふ~ん私の水着を見てくれる約束破るんだぁ。何だか傷付いちゃったかなぁ~」


 ワザとらしく『傷付いた』という単語を強調してやると別れ話に発展するかもしれないと焦った龍太が慌てて冗談だと言って来る。


 「ご、ごめん! ちゃんと最後まで水着選びに付き合うから傷付かないでぇ~!」


 涙目になりながら必死に訴える龍太の姿、その破壊力は愛美だけでなく様子を伺っていた他の女性客にも効果抜群だった。


 やばい…あの娘ったら可愛すぎでしょ……。


 気が付けば愛美と同じように近くの女性客達も鼻から赤い果汁を垂らしていたのだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] この姿を是非愛美パパにも見て頂きたいw
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