元幼馴染の謝罪にツンデレ美少女が怒りを感じました
仲良く手を繋ぎながら龍太の家を目指して愛美は歩を進めていた。
ここ最近では一緒に歩く際にはこうして手を繋ぐ機会が増えた気がする。龍太としては少し恥ずかしかったがそれ以上に好きな人の温もりを感じられて照れくささ以上に胸が温かくなった。
ちなみにだが龍太と愛美の二人が交際関係となっている事実は両クラスの生徒達にはもう知れ渡っている。まあ昼休みのたびに一緒に仲良くお弁当を食べ合っていたり、学校を出る際に二人で手を繋ぎながら下校する姿を目撃されているのだから当たり前だが。
「さーて、もうそろそろ期末考査開始だね」
「そうねぇ…龍太は何だか余裕そうで羨ましいわ」
もう期末考査まで間もないと言う事で愛美は今日も彼氏の家で勉強会に勤しむ予定だった。間も無く大きなテストが始まると言う事もあって学校全体の空気は何だかピリピリしている。ただ隣で一緒に歩いている龍太はその空気に呑まれる事無くマイペースに振る舞っている。
ほーんと、今更ながらに私の彼氏君は高スペックねぇ……。
あくまで彼の人間性に惚れたからこそ交際をしているがそれでも龍太は自覚が無いだろうが中々にスペックの高い人間と言える。とても頭が良く人に勉強を教えるのもかなり上手と言えるだろう。あまり賢くない自分にもとても分かりやすく教えてくれるお陰でテスト勉強もいつも以上にはかどっている。それに肉体面の方も日頃からトレーニングをしている賜物で筋力あり頼りがいのある。それに何よりとても穏やかで思いやりのある人間性まで兼ね備えている。ただ優し過ぎるところは同時に不安要素でもあるのだが……。
こうして彼を知れば知るほどにあの愚かな高華天音には呆れてしまう。
こんな良くできた幼馴染を見放して安藤の様な男を選ぶなんてね。とても私には理解できないわ。
だがそのおかげで自分はこの龍太と言う人間と知り合えたと考えると複雑でもある。
「あれ、家の前で誰か騒いでいる?」
自分の家の付近までやって来て龍太は自宅の玄関先で二人の人物の揉め合っている姿が確認できた。まだ距離もあったのでハッキリ姿は視認できなかったが少し近づけばその人物達が誰なのか判別できた。
「何でアイツが龍太の家の前に居るのよ……」
まさかの人物の姿を愛美もその目でハッキリと捉える。すると今まで彼氏と上機嫌気味に手を握っていた彼女の表情は一気に苦虫を噛み潰したかのような顔へと変化する。
思わずその場で二人は揃って足を止めて視線の先にいる幼馴染と妹の喧噪に耳を傾けた。
「だから迷惑だって言っているでしょ!! もう帰ってよ!!」
「お願い!! どうかちゃんと龍太に謝らせて!!」
「いったい何度同じ事を言わせれば気が済むの! 謝ったってなんにもならないんだってばッ!!」
会話の内容に耳を傾けてみればどうやら天音は自分に対して謝罪をするためにやって来たらしい。
「天音が自分から謝りに来た……」
その事実を知った時に龍太には様々な感情が芽生える。だがその中でも一番大きかったのはこれだった。
あの歪んでた天音が自分から謝りに来た。ちゃんと反省してくれたんだ!
彼女に心から反省し、更生して欲しいと願っていた彼からすれば彼女が自らの意志で謝りに来てくれた事は素直に嬉しかった。ようやく昔の純粋な頃の彼女が戻った気すらしたのだ。
だが隣に居る愛美はまるで違った。あの鬼気迫る天音の姿を見て龍太とは違いむしろ警戒心しか抱けなかったのだ。
この停学中にわざわざ謝りに来た? 凄く嫌な予感しかしないんだけど……。
しばし二人のやり取りを遠巻きに観察していると天音と涼美が同時に龍太達の存在に気が付いた。そして龍太の姿を見るや否や天音はこちらへと迷うことなく駆け寄って来た。
鬼気迫った雰囲気を纏わせて寄って来る天音に最大限の警戒心をむき出しにする愛美だが龍太は先程の会話から天音は反省したのだと能天気に考えていた。
「やっと帰って来てくれた。待っていたよ龍太」
「あ、天音……」
息を切らせながら傍に寄って来た天音は悲痛そうな顔をしていた。
その背後からは涼美が続けて二人へと駆け寄って来る。またしても邪魔をされる前に天音は龍太に自分の反省の弁を述べ始めた。
「あの龍太、今まで散々あなたを傷つけてごめんなさい!」
そう言うと彼女は頭を下げたまま一方的に謝り続ける。
「最初は理不尽にあなたを逆恨みしていた。でも停学になって自分と向き合う時間を得てあなたに救ってもらっておきながら私はなんであんな酷い裏切りをしてしまったんだろうって後悔したの」
すると彼女はポケットから〝とある物〟を取り出した。
「これ…初めて龍太がくれた手作りの指輪。これを見て思い出したんだ。龍太と過ごした楽しい日々を……一時の感情に流された私が今更どれだけ謝っても手遅れなのは重々承知している。でもどうか謝らせて……本当に……今までごめんなさい……」
自分の後悔の念を吐露する姿に愛美は何も言わず黙って聞いていた。
なんか龍太ったらどこか嬉しそうだけど……何か嫌な予感がするわね……。
幼馴染を許すまでなら構わない。だが変に同情しそうで少し愛美の胸中に嫌な予感が湧き出て来る。
だが次に彼女の取った行動には流石に怒りを滲ませてしまった。
「ねえ龍太、もう一度……昔の様に戻りたい。またあの幼馴染時代の私達に戻れないかなぁ……」
………はぁ? コイツは一体何を言ってるんだ……?
その言葉を龍太と共に耳にしていた愛美と追いついた涼美は下唇を噛んで怒りすら感じた。
龍太にはケジメを取ったのだから反省していたら手助けぐらいしても良いんじゃないかと思ったけど前言撤回だ。何がまた昔の様に戻りたいだ。そんなセリフを恋人の私の居る前で良く吐けたな?
普通であればあれだけやらかしたのだ。反省したとしても今までの様に自分から積極的に関わろうとはしないはずだ。そう思ったからこそ愛美だって龍太に停学明けで困っていたら多少の手助けぐらいは大目に見ても良いと思ったのだ。だがこの女はもう一度やり直そうなどとほざいたのだ。
「呆れてものが言えないとはこのことね。ねえ龍太、悪いけどあなたの幼馴染は心から反省なんてしていな……」
「よかった……思い出してくれたんだね天音。また昔の優しい頃の天音が戻って来て本当に良かった……」
………………………んん?




