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女装少年が子供の為に怒りました


 突如女の子の叫び声が鼓膜を震わせ龍太はドームの中から反射的に飛び出した。

 そして眼前には信じがたい光景が広がっていたのだ。なんといかにもガラの悪そうと思われる二人組の青年が子供達に突っかかっていたのだ。


 「たくっ、キャッキャッ騒いでうるせーんだよ。こっちは合コンドタキャンされてイライラしてんのによぉ」


 そう言いながら青年の1人が女の子を面白半分につま先で小突く。

 

 「いやぁ、やめてぇ…」


 女の子の方は自分よりも遥か年上の青年にちょっかいを出されて涙目になりながら震えている。

 

 「やめろぉ!」


 泣いている女の子を護ろうと男の子は果敢に青年の暴挙をやめさせようとする。だがもう1人の青年がそんな少年の勇気を嘲りながら突き飛ばして転ばせる。


 「おっ、イヤリングじゃん。今時の子供は大人びてるなぁ」


 転んだ女の子の手の中から男の子から貰った手作りイヤリングが零れ落ちる。それを青年は拾い上げるとそのまま遠くの草むらへと放り捨てたのだ。

 自分の為に作ってもらったプレゼントを捨てられついに女の子は本格的に泣き出した。それに釣られて男の子も泣き出す。その二人を見て二人組は一体何が面白いのか下品に笑う。


 気が付けば龍太は羞恥心など完全に忘れて怒りと共にドームから飛び出していた。


 「何をやってるんだお前達は!!」


 自分達と子供しかいないと思っていた青年二人は一瞬だけビクッと体を震わせるが相手が少女(正体は少年)と分かるとすぐに余裕を顔に出す。

 その二人の顔を見て龍太はある事に気付いた。


 あれ、この二人って前に愛美に絡んでいたあのチャラ男達じゃないか!?


 もう二度と出会う事もないだろうと思っていた二人とのまさかの再会に一瞬だけ呆気に取られてしまう。それと同時に顔を知られている自分の今の恰好を見られて最悪だと言う考えも浮かんだ。だが龍太の女装はレベルが高いことが功を奏した。


 「うおっ、メイドさんじゃん!」

 

 「君メチャクチャ可愛いねぇ! ねえ、何でそんな恰好してるの!」


 どうやら相手の二人は龍太を男だと見抜けずあろうことか下卑た笑みを浮かべて近寄って来たのだ。

 軽く背筋に悪寒が走るが今がチャンスと思い龍太は子供達に逃げる様に目線を送って促してみる。だが子供たちはこの場から逃げたいと言う思いと共にどうやらイヤリングも探したいと思っているらしく龍太と草むらを交互に見返している。


 そうだよね。折角貰ったプレゼントを残していきたくないよね……。


 子供達の気持ちを考えていると青年達はもうすぐ傍まで迫っており片方が馴れ馴れしく手を伸ばして来た。


 「ねーねーあんな子供なんて放っておいて俺達とお話ししよーよ」


 気安く自分の体に触れようとする青年があまりにも気持ち悪く龍太は一瞬で男の手を握る。そのまま鍛え上げた握力で青年の手を握りつぶさんばかりに力を籠めた。


 「いだだだだだッ! 手、手が潰れるぅ!?」


 あまりの激痛に青年のニヤケ面は苦悶に満ちた顔へと変わる。

 叫び声を上げる相方に狼狽えながらももう片方の青年が龍太の顔をよく観察してようやく彼の正体に気が付いた。


 「ああッ! おいコイツって前に絡んで来たあのチビ助じゃねぇのか!?」

 

 「えっ、マ、マジだ! いででででッ!!」


 正直外見だけでは気付けなかっただろうが以前も今の様に拳が潰されそうな経験がフラッシュバックしたお陰で思い出せたのだ。


 まさかあの時の少年がメイド姿で現れるとは思わず動揺している青年の隙を付く。

 もう1人の方の青年の拳もキャッチすると同じく見た目に反する怪力で握りしめる。


 「あがぁッ!? つ、潰れてしまう…!」


 「は、離せぇ…!」


 必死に抵抗しようとするがあの時と同じく握り潰されている拳から継続的に発信される痛みに二人はまたしても抵抗もできずその場で膝をついてしまう。しかも今回は子供を泣かせていた事もあって龍太の籠める力の度合いも以前より上なのだ。もう二人は脂汗を顔面から流している始末だ。


 自分の正体がバレてしまった事に僅かばかりの羞恥心が芽生えるがそれ以上に子供達を八つ当たりで悲しませる事が許せず龍太は以前と同じく冷え切った視線を二人へとぶつける。


 「このまま拳を握りつぶされたくなければ一緒にイヤリングを探すんだ。断るなら…分かってるよね?」


 一切の感情を感じさせない冷淡な口調のまま龍太はここで二人に向けてありったけの笑顔を向けてやった。


 「もちろん手伝ってくれるよね?」


 「「は、はい手伝います。是非とも手伝わせてください…」」


 とても愛らしい少女(少年)の笑みのはずが二人にはまるで悪魔の笑みに見え気が付けば二人は引き攣った笑顔を浮かべながら頷くのだった。



 

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[一言] 龍太君がかっこよすぎる(憧れている)
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