エバンビーク侯爵家の秘密
ロード王国第五軍はロード王国の王都に凱旋した。
王都はお祭り騒ぎだ。
ロード王国は亡国の憂き目からエクス帝国の攻撃を押し返し、反対に帝国を滅ぼしてしまった。
王都に入ると街の人がロード王国第五軍に花吹雪を降り注ぐ。
皆んな笑顔だ。
花吹雪の中、幻想的な光景に頬が緩む。
なんだかんだ言っても三ヶ月近く遠征していた。
精神的な疲れは溜まっている。
御前会議で帰還の報告をするアイヴィー。
国王陛下であるナルド・ロードは喜んでいるはいるのだが、複雑な顔をしている。
国王陛下がアイヴィーに声をかける。
「さすがアイヴィー・ロードバル侯爵だ。この度の戦争は誠に見事であった。この偉業に応えるためにアイヴィー侯爵を例外的に公爵とする事にする。またエバンビーク侯爵の領地を治めるが良い」
「ありがとうございます。その他にエバンビーク侯爵家の王都の屋敷もいただきたいのですがよろしいでしょうか?」
「別に問題良いぞ。取り潰しが決まった貴族の屋敷なんて縁起が悪いから問題ないな」
すでにエバンビーク侯爵家は取り潰しに決まっていた。
またエクス帝国の内通者として一族郎党斬首される事が決まっていた。
ソフィア姉さんの死刑は避けられない。
私はブランバル伯爵家の蔵でアイヴィーと出会った。
ソフィア姉さんはアイヴィーと因縁のエバンビーク家に嫁いでいただけだ。
もしかしたら私とソフィア姉さんの人生が交代していた場合もあっただろう。
アイヴィーとの仲が深まるに連れ、ソフィア姉さんの事はどうでも良くなっていた。
ソフィア姉さんが死刑になると聞いても心が何も動かない自分がいた。
アイヴィーは早速、エバンビーク侯爵家の王都の屋敷に向かう。
誰もいない屋敷。
屋敷の中に入ると微かに魔力の反応を下の方から感じる。
地下!?
アイヴィーも魔力の反応を感じているようだ。
ただ地下への入り口がわからないわ。
アイヴィーが床に手を当てる。
目を閉じて集中している。
数分そうしていたアイヴィーが目を開く。
書斎に入っていく。
アイヴィーの後をついていく。
アイヴィーは本棚に手をかける。
本棚が左右に動く。
本棚の奥に地下に降りる階段が現れた。
階下に降りていくアイヴィー。
怖くないのかしら?
「ねぇ、アイヴィーって恐怖心ってないの?」
「俺が恐怖心?面白い事をエルシーは言うんだな。笑ったほうが良いか?」
軽い調子で返すアイヴィー。
確かに恐怖に怯えるアイヴィーは想像がつかないや。
階段の先は鉄格子になっていた。
鉄格子の中は部屋になっていて隣が食料庫になっているようだ。
女性が虚な目で中にいる。
まるで感情がない。
「やっぱりそうか」
「やっぱりってどういうこと?」
「こいつは俺の同郷の仲間だよ。不老になっているんだ。だから500年以上生きているな。ずっとエバンビーク家に血を取られてきたんだろう」
アイヴィーの同郷!?
500年以上生きている!?
「500年前の聖女のサラ・エバンビークは俺らの同郷を実験体にしていたんだ。聖なる魔法と言われる魔法は俺の同郷の血を使った産物だな。未だに血を取っていたんだろ。そうだと思っていたよ。そうじゃなければおかしいからな」
虚な目をした女性に魔力球をぶち込むアイヴィー。
「魔力は血に宿る。俺らの血、魔力は他人の魔力に干渉する事ができる。魔力を整えていけば気持ちは落ち着くし、不老に近づく。反対に乱してやれば不安な気持ちにさせる。暴走させれば魔力が高いやつは破裂する。何が聖女だ!聖女の子孫が聞いて呆れる!奴らこそ本物の悪魔だよ」
肉片になった女性は微笑んでいたように感じた。
エルシー:エクス帝国、ロード王国って……。
アイヴィー:どうした?
エルシー:いや葉暮銀の【ジョージは魔法の使い方を間違っていた!?】にもエクス帝国とロード王国って登場しますよね? 同じ世界なのかなって。
アイヴィー:この【世界征服のお手伝い】は【ジョージは魔法の使い方を間違っていた!?】の4ヶ月前に書かれた小説なんだ。6万5千文字まで書いた時に人気が出る確信が持てなくてお蔵入りさせられたんだよ。
エルシー:お蔵入りって、アイヴィーは蔵に500年封印されてたのに、またですか……。
アイヴィー:まぁこの作品を書いた後に【ジョージは魔法の使い方を間違っていた!?】を書いたからロード王国、エクス帝国の名前が同じなんだな。作者の葉暮銀は国名や名前を考えるのが嫌いだから。同じ国名でも同じ世界ではないね。
エルシー:そんなんだ。そういえば不老の設定や、魔法射撃場の魔道具も似ていますね。
アイヴィー:【世界征服のお手伝い】の構想を【ジョージは魔法の使い方を間違っていた!?】に流用したんだね。
エルシー:もしかしてパ●り?
アイヴィー:いや自分の未発表作品の構想の流用だから問題無いでしょ。
エルシー:そういえばそうですね。
アイヴィー:【世界征服のお手伝い】の裏話でした! よ、良かったら下の星を……。
エルシー:なんですか? 聞き取れないですよ?
アイヴィー:と、とにかくよろしくお願いします!





