呪いのペンダント
エクス帝国への侵攻は第五軍が先陣を切るになった。
第五軍が攻め入った後に第三軍と第四軍が拠点を抑えていく。
ある意味無茶苦茶な作戦である。
エクス帝国は平野が広く広がっている。
アイヴィーは二頭立ての戦車を作らせた。馭者を一人つけ、後ろにアイヴィーと私が立ちながら攻撃する形だ。
出兵が決まってから二週間後にエクス帝国の国境に入る。
目の前に大きな砦がある。
エクス帝国自慢のガバンギル砦だ。
砦の上ではこちらに気が付いたようだ。
まだ向こうは魔法と弓の射程距離になっていない。
アイヴィーは涼しい顔で戦車から40㎝を超える魔力球を放つ。
真っ直ぐガバンギル砦に当たる。
物凄い爆裂音。
アイヴィーはその後も3発ほど魔力球を撃ち込んだ。
崩れていくガバンギル砦。
突っ込んでいくロード王国第五軍の隊員。
アイヴィーは悠然と戦車を進めさせた。
ロード王国軍は破竹の勢いでエクス帝国の領土を進んでいく。
占領した街で野営をする。
私はいつものようにアイヴィーに吸血してもらう。
快感で蕩けた頭の中に私はいた。
「ぬぉぉぉ!」
耳元でアイヴィーの変調を感じる。
急激に頭が冴える。
アイヴィーの首元にはペンダントがかけられている。
その後ろには黒尽くめの人影が見える。
慌てて私は魔力球を放つ。
爆裂する人影。
「ぐおぉぉぉ!」
叫び続けるアイヴィー。
急いでペンダントを外す私。
落ち着き出したアイヴィー。
ペンダントを持っていると何か変な気持ちになる。
私はペンダントを手から離した。
アイヴィーがペンダントを踏んで壊した。
「ちょっと油断していた。今、エクス帝国にはエバンビーク侯爵がいたな。俺が500年前の恐怖の魔王と気が付いたかもな。このペンダントはエバンビーク侯爵家に伝わっていたものだろう。俺が封印されていたペンダントと同質なものだ」
聖なるペンダントというより呪いのペンダント。
こちらの魔力を乱す魔法。
アイヴィーがやられる可能性ってあるの?
黒尽くめの人の気配は全く感じることができなかった。
「アイヴィー、このままエクス帝国に行くの?危なくない?」
「注意をしてれば問題ないさ。さっきのはちょっと油断しすぎたな。エバンビークの魔法がある事がわかっていればなんて事はない。エルシーにも期待しているからな。呪いのペンダントは俺には相性が悪すぎる。エルシーならば対抗可能だ」
アイヴィーと私の世界征服に少しだけ影が差した。





