流行の発信
今日はガラン・キッシュに話しかけられた。
キッシュ侯爵家は魔法の大家だ。
ガランからは魔力球が使える私に師事したいとずっと言われている。
最近では少しウザい。
父親が宮廷魔導師長のため、あまり邪険にできないのが辛い。
ただキッシュ侯爵家は王位継承争いでは中立だ。
今日も適当にガランをあしらっている。
しつこいガランを見兼ねて、生徒会長のマリウス・ロードがガランを注意してくれた。
現在、第二王子のマリウス派の中心はサライドール公爵家。
第一王子で王太子のパウロ派はエバンビーク侯爵家だ。
ブランバル伯爵家としてはこのままマリウス派に入ったほうが良いような気がする。
完全にソフィア姉さんとは敵対する事になるけど。
今日はマリウスからは露骨に自派閥に入るように勧誘された。
やはり王位継承争いは起こりそうだ。
帰宅したらアイヴィーに相談しないと。
夜の吸血の後にアイヴィーにマリウス派に入るか確認をする。
「ねぇアイヴィー。今日、マリウス先輩からマリウス派に入るように言われたけど、とうしたら良い?」
「王太子のパウロ派はエバンビーク侯爵家が中心だから、そちらには入れないからな。俺たちは中立派かマリウス派の選択肢しかない。まぁ今のところは適当に流せ。そうだな、時期が来たら手助け致しますとでも言っておけ」
アイヴィーはロード王国の王位継承争いなんかは意味が無いとでも言わんばかりである。
最近は社交のため、お茶会やパーティにも出席するようにしている。
嫌だがアイヴィーの指示である。
断ったら、「もう吸血をしないぞ!」と脅された。
吸血を人質にするなんて酷すぎる…。
アイヴィーの商会であるハマス商会のドレスや装飾品、香水をつけたりする。
また用意する紅茶やお菓子もハマス商会の物だ。
私を通してハマス商会は貴族にも販路を広げている。
アイヴィーの演出がうまいのだろう。
気付くと私は社交界の中心になってきている。
流行を私が発信している。
大きな戸惑いとちょっぴりの優越感。
だんだんとその比率が変わってくるのだろうか?
アイヴィーと出会ってからどんどん私は変わっていく。
この先にはいったい何が待っているんだろう。





