アイヴィーの過去
冬休みが終わり学校が始まった。
フラウ・サライドールと仲良くなったため、その友人とも話すようになってきた。
友達ができるって最高ね。
現在、A組3位のパウロ・キッシュは相変わらず私を敵視している。
剣術の模擬戦ではこちらを殺しにくる勢いで木剣を振ってくる。
軽くいなして倒しているけど。
学校生活を送っていると世界征服なんて遠い話のような気がしてしまう。
私は流されやすい性格なんだな。
二週間ごとの成績ではずっとA組1位をキープしている。
これなら2学年から生徒会に入る事ができそうだ。
アイヴィーは最近、鷲の翼の連中を使って金貸し業を始めている。
ブランバル伯爵家の名前を全面に出して箔を付け
、財政の弱い貴族に融資をしているようだ。
またダンジョンに潜り魔石の納入も頻繁に行っている。
アイヴィーの個人資産はどうなっているのだろう。
最近はアイヴィーの噂が街で聞こえてくるようになっている。
銀髪の貴公子、ブランバルの神童、ロード王国の麒麟児などと囁かれている。
アイヴィーは全盛期の力に戻り自重をしなくなった。
たぶん、いま画策している事は暇つぶしなんだろう。
私は夜になるとアイヴィーの部屋に吸血をされにいく。
その後、会話をするようになっている。
「ねぇ、アイヴィー。アイヴィーの子供の頃の話が聞きたいわ」
「俺が子供の頃か、もう昔過ぎて覚えていないな」
「それなら500年前の世界征服の戦いについて教えてよ」
「俺の国は小国でな。一つの民族で成り立っている国だったよ。今の歴史書を見ても出てこないから歴史に抹殺されているな」
「アイヴィーのそういう話が聞きたかったの。それで?」
「俺の民族は魔力制御が先天的に才能があったんだ。だから不老に近い人が多くなった。周囲からは奇跡の国って言われていたんだよ」
そういえば以前アイヴィーから魔力制御が上がると不老になってくるって言われたな。
「ある時、その国で人がいなくなる事件が多発した。他の国から組織的に誘拐されていたんだ。魔力は血に宿る。俺の民族の血を飲むと不老になれると噂が流れてな」
私は紅茶を飲みながらアイヴィーの話を聞く。
「その時に戦争を起こせば良かったんだ。それなら戦えた。しかし不老になると感情が希薄になっていくんだ。心が穏やかになりやすくなるようでな。俺の民族は平和主義に偏っていた」
「他の国は不老になりたいために俺たちの民族を根こそぎ実験に使用したんだ。俺はその時、魔法の研究のため全国を放浪していたよ。まだ若かったから魔法を極めたくてな。故郷に戻った時には手遅れだった。もう国としての機能しなくなっていた」
「その時思ったよ。不老ってなんなんだろうってな。不老になると感情が希薄になってくるのさ。どんな事にも感動しなくなってくるんだ。その時、俺は既に不老だけでなく不死にもなっていた。怖くなったよ。生きながら死んでいるようなもんだ」
「喜怒哀楽で一番強い感情はなんだ?簡単だ怒りだよ。俺はずっと怒る事にしたんだ。俺の民族を根絶やしにしたこの世界にな」
「感情を無くさないための世界征服。今回は怒りを持ち続けるために俺を封印してくれた子孫達にはゆっくりと復讐してやろうと思ってな。考えてみれば500年も封印してくれたおかげで怒りが激しくなったから感謝する必要があるかもな」
私は魔力制御が上がったために不老に近くなっている。
しかし不死ではない。
どうにもならなければ自殺すれば良い。
だけどアイヴィーは不死にもなっている。
たぶんアイヴィーは世界征服に失敗しても何て事ないのだろう。
どうせ不死なのだから。
その事も含めての暇つぶしか。





