オーガ=魚?
王国ダンジョンは今日から21階層で活動すると言われた。
21階層は現在の冒険者の攻略記録だ。
周りに冒険者は全くいない。
21階層はそれまでの洞窟型のダンジョンから変わって幅が5mほどの煉瓦作りだ。
魔物はオーガの上位種が数体で現れる。
幅が5mほどの通路に、2mを優に超えるオーガが数体で暴れ回る。
これのせいで冒険者はこの階層が攻略ができない。
これがオーガの壁である。
ここが人間の限界と思われていてもしょうがない。
アイヴィーは私の強化が目的と言っていた。
私の魔力球では威力が不足している。
どうするつもりなのだろう?
アイヴィーは特に説明をしてくれない。
私は不安を胸にアイヴィーの後についていった。
王都ダンジョンの1階層の魔法石から21階層に転移する。
煉瓦作りのダンジョンの壁が薄く光る。
少し歩くとオーガが三体現れる。
アイヴィーは素早くオーガに接近する。
それに気が付いたオーガが威力がありそうな右フックをアイヴィーに打ち込んでくる。
しかしその右フックはアイヴィーに当たることは無かった。
右フックを放ったオーガの右腕は地面に転がっていた。
瞬きをする間もなく、アイヴィーは剣を振るっていく。
三体のオーガは無惨にも両腕と両足を切断されて転がった。
「エルシー!早くこいつらの顔に至近距離から魔力球ぶち込め!」
こんな状態になっても生命力の強いオーガは生きている。
これは幸運なのか不運なのか。
間違いなく不運なのだろう。
私は近距離でオーガの顔に魔力球を放っていった。
たとえ魔物相手とはいえ、両腕と両足がなくて転がっているオーガにとどめを刺す行為は精神がガリガリと削られていく。
アイヴィーは作業のようにオーガの手足を切り落としていく。
私は何も考えずに魔力級を撃ち込んで行く。
アイヴィーは久しぶりに接近戦をしてテンションが上がっている。
たまに嬌声を上げて剣を振っている。
アイヴィーが剣を振る。
転がるオーガ。
トドメを刺す私。
魔石を拾う。
ただこの作業を繰り返し続けていた。
ガリガリに削られていた精神も今は何も感じなくなる。
半日もやっていると慣れてきた。
人間の精神って凄いな。
結局は魚を捌いているみたいなもんだ。
オーガを倒しながらダンジョンの奥にも進んでいく。
26階層の入り口まで来た。
完全に現役冒険者の最高記録だ。
魔法石に私の魔力を登録する。
これからは26階層で私の能力を上げる予定だそうだ。
これでこれから他の冒険者と出会う事もないだろう。
王都ダンジョンから出てギルドに5万バルト分の魔石を納品する。
今日集めた魔石では大き過ぎるため、家に置いてある適当な大きさの魔石を持ってきてある。
冒険者ランクのGランクは登録時のランクだ。
これは登録だけしている人と分からせるランクである。
Gランクでもダンジョンの1階層でコボルトを討伐していれば3日ほどでFランクに上がる。
Fランクは初心者のランクである。
ここでダンジョンの1〜3階層で1ヶ月程度のダンジョン活動をすればEランクに昇格する。
Eランクになると初心者は卒業となる。
Eランクになると4人パーティで1階層から6階層まで1日で走破できるようになる。
これができるようになるとダンジョン活動だけで収支がプラスになってくる。
1階層から6階層の入り口までの周回を3ヶ月ほど続けるとDランク冒険者に昇格できる。
通常の冒険者はここで頭打ちになる。
Dランク昇格までは魔石の納品量の総量で決まる。
しかしCランク冒険者になる条件はダンジョンの10階層を超えることである。
6階層以降はオークの壁が立ち塞がるのである。
6階層から10階層で活動する冒険者は1割にも満たない。
また10階の試練の間のオークキングを倒すのはリスクが大きい。
もし6階層でオークを安定して倒せるならば一日の収入が8〜10万バルトになる。
4人パーティと考えると1人当たり2〜2.5万バルトだ。
それなりに余裕がある生活が送れる。
生活とは安定が大切である。
1階層から6階層の入り口までの周回でそれなりに食べていける。
6階層以降でオークを安定して倒せれば余裕のある生活が送れる。
ほとんどの冒険者が10階層のオークキングに挑戦はしない。
Cランク以上の冒険者は安定した生活を捨てている冒険者である。
どこまで自分の力が通じるのか試してみたい冒険者ばかりだ。
また大手のクランが宣伝のためにダンジョン攻略を進めている。
毎日5万バルトの魔石を納品しているアイヴィーと私は現在Eランク冒険者になっている。
あと数日魔石を納品していけばDランクに昇格しそうだ。
実は私とアイヴィーは現在20階層の試練の間を超えているためBランク冒険者になる資格が既にある。
Bランク冒険者になるには、Dランクに昇格してから10階層でオークキングを倒して得た魔石と、20階層でオーガ亜種を倒して得た魔石を納品するだけである。
ちなみに各冒険者ランクへの昇格条件は
Gランク・・・冒険者ギルドの登録
Fランク・・・一定量の魔石の納品
Eランク・・・一定量の魔石の納品
Dランク・・・一定量の魔石の納品
Cランク・・・王都ダンジョンでは10階層制覇
Bランク・・・王都ダンジョンでは20階層制覇
Aランク・・・王都ダンジョンでは30階層制覇
Sランク・・・冒険者ギルドが偉業を認めた者
となっている。
Cランク以上は他の街との兼ね合いがあり、細かい規定があるそうだが良く知らない。
冒険者ギルドが上がると指名依頼などがあった場合に依頼料が上がっていく。
またCランク以上になると世間的には尊敬される立場になる。
アイヴィーと私は当分、Dランク冒険者で止めておく予定だ。





