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廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第2部『二つの太陽編』
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ストローよりスプーンでかきまぜた方が楽だった。あと原住民族は『ランボー』パロの『サンダー』

 昔、ミルメークをどうしたら美味しく飲めるかという実験をしたことがある。

 裏に説明書きがあり、牛乳に入れ、ストローでよくかき混ぜて飲めばコーヒー牛乳のようになって美味しいという粉末だ。

 美味しい物と美味しい物を掛け合わせれば最強に見える。

 俺と友達はこれを味噌汁に入れて飲むことにした。


 ――味噌汁の味がした。


 その時の失敗と、全く同じような気がする。

 結論、生卵を使用した脅迫は事態が混迷するということがわかった。


 ――きっと、混ぜるのに割り箸を使ったのがマズかったんんだな。


 ストローを使うべきだった。 


「奸計をもって謀るなど!やはり人間は信用なりません!」

 「とはいえ、強者であり、私を下したことにはかわらん」


 エルフの酋長――ウィンミント・ショートフォイルとビーストの酋長――ココ・ナ・ツパレットの反応はまるで正反対だった。


 「我が旗下のビーストはレジアンに従おう。レジアンが拠点となる街を作るのであれば協力を惜しまん……群れというのは強い者に従い、自らを守るものであるからな」

 「ココ!あなたという人はッ!600年前の災厄を経て、我々が人間に受けた仕打ちを忘れたのですかっ!」

 「忘れたとは言わん。だが、私は敗北したのだ。おそらく、何度挑んでも負けるだろうよ。たとえ幸運が味方して勝ったとしても……また、下されるだろう。それならば夫として認め、種の繁栄を望み、一匹の雌として生涯を送るのも悪くは無い」

 「あなたは長なのですよっ!あなたを信じるビースト達が人間にいいように扱われるのを黙って見ているというのですかっ!」

 「従えぬ命ならば勝手に断るであろう。それに、その程度で駆逐されるのであれば、我らの種というのがそれだけの力しかなかったということだ。弱き者が淘汰されるのが自然の摂理。なればそれもまた、一つの摂理として受け入れるしかなかろう」

 「あなたはそれでいいのですかっ!」

 「――600年前から伝わるビーストの言葉にこういう言葉がある。『アフリカではよくあること』」


 流石サバンナで生きる連中は風格が違った。


 「たっはー……ビーストは寝返ってくれたッスけど、エルフの方は難しそうッスねえ?ちなみに、寝返るってどこか響きがいやらしくないッスか?」


 マノアが面白そうに笑うが俺は断じて寝てない。

 チュートリアがどこか俺を睨んでおり、俺は逆に睨みつける。


 「あんだよ」

 「……責任きちーんと取ってくださいよねー」

 「俺何かした?ナニしてねえって釈明は今したばっかりだろ?」

 「女の子を傷物にしたんですよねー」


 言いがかりも甚だしい。

 言いがかりのつけあいで俺に勝てると本気で思ってんの?


 「俺がやったことって生卵かき混ぜて過失でぶちまけただけじゃねえか、ごめんなさいしたよな?そもそも兵隊をけしかけ、挨拶に行ったら魔法やらハンマーやらで襲われて、ぶっちゃけ命が危険で危なかったのは俺のはずだよな?」


 軽くジャブを放って見ればたじたじになるチュートリア。


 「そう、言われてしまえば……そうなんですけど……」

 「むしろ俺が責任とって欲しい訳なんだが何で俺がお前に責任取れ言われんの?つかよ?そもそもお前がこういう種族だってわざと教えなかったのが問題あるんじゃね?しかももうぞろ俺の性格もわかってるわけだからお前がきちんと俺に説明してればもそっと事態は好転したのとちゃうん?だから、責任を本当に取るべきはお前なんじゃねーの?それを俺に責任取れとか頭おかしーんじゃねーか?ドリルみたいな頭しやがって。そのドリルでお前にアダマス鉱石を掘らせるぞこの野郎」

 「うう……でも、それはマスターの人間性に問題があるからだと……でも、私の役割もあるから、やっぱり私に責任が?……でもそれを言ったら負けのような気が……」


 最早グロッキー状態のチュートリアに俺はトドメを刺す。


 「気がつけば森の原住民族に敵意向けられて狐が嫁入り状態ですよ。俺ぁ挨拶に行っただけなのに、いつの間にか宣戦布告状と婚姻届を提出したことになってるじゃねえか。大使館と市役所に行った覚えはねえぞゴラ」

 「でもマスター……襲撃して拉致るとかおっしゃってましたよね?」

 「それ、俺の国の挨拶だから。お前の言葉を借りれば『言わなくてもわかると思ったから』。これで責任を取るべきが誰かハッキリしたな?とりあえず俺の世界の原住民族の如く脱いでお前のドリルに鳥の羽刺してロードローラーで白人の警察署に突入してバズーカでぶっ壊して来い。できなければそこの隅っこでうずくまって尻にソーセージでも詰めとけバーカ」


 ブーメランでさくっとトドメを刺してチュートリアを黙らせると俺は敵意

を向けているエルフ――ウィンミントに向き直る。


 「……粗暴で悪辣な人間、あなたの本性をたった今見させて頂きました。私がたとえここで汚されようとも我々は決してあなたには従いませんッ!」

 「むぅ、どうしたもんかぬぅ……」


 ビーストのように寝返ってくれればラッキーと思ったがなかなか上手くはいかないようだ。

 ぶっちゃけ、生産系スキルの高いエルフの方が今は重要でビーストはもうちょっと後にならないと人材的に要らないというのが心情だ。

 食料事情もあるだろうし、エルフを先に確保しておきたいのが心情なのだが。


 「……師匠、こうも言ってるし本当に犯っちゃえばいいんじゃねえッスか?」


 マノアが俺の耳元でささやく。


 「でもなぁ……」

 「たとえ汚されてもって言ってるッスけど、きっと本心では犯られたがってるッスよぉ?2、3日もズコンバコンブチこんでやりゃーそのうち嫌でも師匠の言うこと聞きますって。なんなら、そういった時に使うクスリ、プロフテリアまで行って買ってきやしょーか?」

 「お前相当悪だなー……俺、童貞やで?いきなり初見で高レベルすぎてドン引くわー」

 「師匠にはかないませんてー……どうせだったら私と練習するッスか?」


 さらりと爆弾発言する弟子にチュートリアの怒りがホッハする。


 「なななななんてこといってるんですかっ!そんなこと許しませんからねっ!師弟の関係とは師からその技術を学ぶ為の厳粛なものでなくてはいけないんですっ!ましてや私のマスターは童貞、つまり、その技術に対して何も持っていないんですっ!」

 「じゃあ、師匠のイリアがやるッスか?ぶっちゃけ師匠も男なんだから女の子に手を出したいって当たり前の欲求あると思うんスよねー。やっぱりレジアンだとその辺り違ったりするんスか?」


 言えない、決して、言えない。


 ――童貞オタク野郎特有のおにゃのこを前にしてすくんでしまうアレがあるとか、絶対に言えない。


 いや、欲望はあるし、この世界に来てからというもの性欲が無いってのも確かにあるっちゃある。

 でも全く無くなった訳じゃなくて、時折、そう、時折ムラムラっと来るものも在るわけだがそれでも我慢できるレベルだったりする。

 また、ウソでもなく童貞野郎特有の夢としてBバージン志望であったりするもんだから始末に負えないだけなんだけど、その根っこにあるのが童貞野郎のアレだってことはこいつら相手に口が裂けても言えない。

 どこかこの事態に頭がおかしくなってきたこいつらをなんとかせなと思って、俺は一人頭を悩ましているとウィンミントが噛みついてきた。


 「ふしだらなっ!我欲のままに生きるのでは獣とかわらないっ!あなたのようなケダモノに誰が従うものですかっ!」


 ぶるぶると震える幼女を見てガチで興奮できる奴が居ればそりゃ変態だと思う。

 そりゃあまあ、エロゲーだとかの話でシチュエーションとして見て楽しんだことはゼロじゃあないですよ?

 だけど、うん、まあ、性的な対象としてアレするにはちょっとなあ。

 俺がふんむと頷き、身じろぎすると過敏に反応してウィンミントが叫ぶ。


 「ケダモノ!こっちに来ないで!私に酷い事をするツモリでしょう!エロ同人みたいに!」


 なんだろう。

 こいつらところどころ俺の世界の言葉を使ったりするから微妙にこっちとしてもテンションが下がるんだよなぁ。


 「師匠ぅ……どうしますー?スパっとやっちゃいます?」

 「ネルっ!マスターに変なことを吹き込まないで下さいっ!マスターなら呼吸するように犯罪行為に走るから発想を与えてしまったら後が大変なんですよっ!」

 「大自然に法は無い。あるがままに振る舞うのがまた、王者の風格。私は王の行いを受け入れよう」

 「ココだまれー。ろーたーは、あげない」


 もうなんか好き勝手喚きだした頭のおかしくなったIRIA達に俺は辟易する。


 「……なんだか、俺、頭がおかしくなりそうだ」

 「マスター、そう言ってまた突拍子もない犯罪行為はやめてくださいね?普段からキチガイキチガイって開き直ってるから私としてももう次の行動が予想できないんですから。マスターの歩く先には死体の山ができあがり、刃向かう者は皆殺し、血も涙も乾いた残虐非道の限りを……」

 「そやっ!閃いたっ!」


 チュートリアの言葉にヒントを得て、俺はとてつもなく素晴らしいアイデアを閃く。

 どこか晴れやかな笑顔で笑う俺に、マノアが顔を輝かせ、チュートリアが青ざめ、ココが誇らしげな顔をする。

 ウィンミントだけは俺を睨みつけ、テンガは俺の部屋の壁をかりかりと引っ掻いていた。


 「うん。そうだ。最初っからこうすりゃ良かったんだ。自分でもどこからしくねえって思ってたんだよ」


 ――おにゃのこ相手だから卵白を使って偽装強姦とかまだるっこしい。


 とはいえBバージン志望は譲れない。

 だとすれば、アプローチを変えれば良かっただけの話で。


 「いやぁ、ゴメンゴメン。こんな手の込んだ事をして本当に申し訳ないね。どうして気がつかなかったんだろう。本当に失礼しちゃうわー」


 俺はウィンミントを縛るロープを外し、奪った装備を返却しどこまでも善人な笑顔で笑いかける。


 「ごめんよぉ?怖かったろぅ?もう、自由に帰っていいから」


 悪人オーラからなんの脈絡も無しに善人オーラを振りまく俺に、チュートリアだけが恐怖を覚え青ざめて震える。


 「なんだろう……ものすごく、嫌な悪寒がします」


 ◇◆◇◆◇◆


 チュートリアのにっき 


 たえられません。

 もう、むり。もうおうちかえる。

 あんなどぐされますたーどこかでしにちらかせがっとーざへぅ!


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