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廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第一部『導入編』
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我々は、今までいろんな巨大生物と戦ってきた。今日、その戦歴に『うんこなう』を加える。

 ウィングコマンダーUNKNOWN第2形態。

 黒く変色した戦闘機――黒い一本グソが高速で飛翔し紫電を迸らせる。

 雷撃の中をステップでかいくぐり交錯しながらの一撃を繰り返す。

 突撃の最中、障気を衝撃として放つカマドウマの鎌が地面を抉る。


 ――超威力の一撃が高速で、縦横無尽に繰り出される。


 「――これが『UNKOWN』の力、なのか……」


 超威力の一撃を盾で受け、マーシーが弱音を吐く。

 それもそのはずだ。

 ただでさえ、近接盾職を削るウィングコマンダーの高威力攻撃がUNKOWN種となったことでその威力は段違いとなっているはずだ。


 ――俺やキクのような軽装職であれば溶けること間違いは無い。


 「そうらッ――突撃来るぜッ!」


 どこか吹っ切れた俺の一言で、それぞれが得物を構える。


 「「――滅せよッ」」


 ボスモンスターに恥じぬ威容をもった重圧なプレッシャーを放ち疾走するウィングコマンダーの前に立ち、マーシーが盾を地面に突き刺す。

 マーシーにポーションを投げつけ、俺たちは散開するとおのおのが待ち受ける。


 ――雷撃を纏った突撃がマーシーの盾の上で閃光を上げる。


 その刹那の瞬間を見逃しはしない。

 即座に赤い竜、俺、キクが一瞬だけ停止したウィングコマンダーに交錯する。


 ――スラッシュレイジ、チャージスマッシュ、そして稲妻ステップからのスラッシュ


 ウィングコマンダーの鋼鉄の外殻の上で火花を散らし、その装甲を削ぐ。

 急旋回し、同時に振るわれた鎌が障気を伴い旋風を巻き起こすが遅い。

 俺たちは即座にその場を離れ、敵の攻撃の範囲外へと逃れていた。


 ――皆が一様に、空気を掴んでいた。


 俺は突進して突き抜けるウィングコマンダーにダッシュ、ステップを駆使して追いすがる。


 「――さぁ、逃げてみせろよカマドウマ。キチガイPKカス野郎の粘着力を見せてやんよ」

 「――くっ」


 ――対人戦で鍛えた『張り付き』でウィングコマンダーの死角をキープしつつ距離を離さない。


 斜め後方45度のキャラクター二人分の位置にポジショニングし延々とつきまとい火力を叩き込む。

 時折、カマドウマが鎌を振るうがモーションを見ていれば回避は余裕である。


 「――砕け散れッ!」


 急上昇し雷光をばらまく。

 激しく稲光が爆発し、障気と燐光をまき散らす中を駆け抜け、俺は即座に装備タブを替えクロスボウとソードに持ち替えると飛翔したウィングコマンダーの背中――カマドウマにサイティングする。


 ――FPSも囓ってきたんだ。狙えない訳が無い。


 「プロEDFのライサンダーはマザーシップもヨガる程ッ!」


 高速で移動するカマドウマにチェーンストックの弾速を考慮し、先置きでポインティング――


 最早、思考するまでもなく完全な『感覚』のみでの発射。


 ――当たるという確信のまま引かれた引き金が、チェーンフックを弾く。


 打ち出されたチェーンフックがカマドウマを掴んだ手応えを感じ、俺はフックを引く。


 「――え?」


 ウィングコマンダーから引き剥がされたカマドウマが地面に落下する。

 だが、落下を待ってくれる程、俺の相方達は悠長じゃあない。

 走り込んだキクがチャージスマッシュで打ち上げ、赤い竜がバスターランスで空中のカマドウマを追撃する。

 そうして、再度落下してきたところをシルフィリスがチャージエンドで叩き飛ばす。

 そこへ再度フックを打ち上げフックジャンプで肉薄した俺が獰猛な笑みを浮かべ嗤う。


 「――いい声で泣きな?」


 どこまでもキチガイなPKプレイヤーとしての獰猛さを隠さず突き降ろしたダウンスラストの剣閃がカマドウマを叩き落とす。

 カマドウマを救うように突撃してきたウィングコマンダーをムーンサルトで避けると着地と同時に追撃で放たれた雷撃をダッシュで躱す。

 旋風と雷撃と燐光が飛び交い、大地が揺れる。

 激しい轟音と衝撃を後に曳きながら、俺達はそれぞれが持てる技術の全てを駆使する。

 回避しながらの視線の端、カマドウマが再びウィングコマンダーの背に跨ったことを確認する。

 再度盾に持ち替え、真正面から俺に突撃してくるウィングコマンダーに余裕を持って奥義で応えてやる。


 ――根拠は無い。だが、できると確信する。


 隅々まで感覚が行き渡ったこの感覚だからこそ、タイミングは外さないと確信した。


 「死になさいっ!死になさいっ!これで全てを薙ぎ払うぅっ!」

 「――死セヨッ!」


 ――デッドアクション『雷撃砲』。


 青く凶悪な輝きが伴いウィングコマンダーが放電し、障気がその上を奔る。

 デッドアクション『雷撃砲』の上位モブバージョン。

 文字通り、一撃必殺のゲロビームが2方向から俺に向けて放たれ地面を穿ち迫る。


 ――記憶と、命を奪う凶悪な一撃の前に俺は牙を剥く。


 「――抜いてやるッ!」


 初見のデッドアクションを神技でもって応ずる。

 ダッシュで懐に潜り込み、そこからの稲妻ステップ。


 ――無敵時間で雷撃砲を潜り抜け、絡まる障気のレーザーをも潜り抜ける。


 神速の雷光と化した俺は稲妻を駆け上りそして、肉薄する。

 そこから即座に背面に回り込む。

 旋回するより早くダッシュを織り交ぜ回り込むとウィングコマンダーの背中に『駆け上がり』、首を巡らせるカマドウマの前で嫌らしく嗤ってやる。


 「――なっ」


 後に曳いた土煙の中、どこまでも獰猛に嗤って剣を振り上げる。


 「小気味いいよなっ!生意気なツラをぶった斬るってのはッ!」


 驚くカマドウマの顔に容赦なく『スラッシュ』を叩き込み、ムーンサルトでウィングコマンダーの頭上を取りダウンスラスト――。

 追って肉薄した赤い竜の槍がウィングコマンダーの足に突き刺さり、キクのハンマーが翼を砕く。


 「――爆ぜろよ光ッ!神の威光よ――ただただ、愛を救ってみせろ!」


 ディバインブレードの光がウィングコマンダーの巨躯を飲み込み閃光を爆ぜさせる。

 地面に降り立ち距離を取る俺の背後、ダメージを負ったウィングコマンダーが『連鎖崩壊チェーンブレイク』する姿があった。


 「GJ!」

 「ぐっじょぶ!」

 「ナイスブレイク!」


 俺の喝采に応え、皆が得物を掲げて応える。

 だが、静かに巨躯を起こすウィングコマンダーの姿が未だ戦闘が終わっていないことを示唆していた。


 ――一気に大ダメージを負ったウィングコマンダーの上、静かに俺達を見下ろすカマドウマの姿がどこか不気味ではあった。


 静かに空中に浮かび上がり、幾重にも紋様を虚空に広げる。


 「これが世界の混沌を導く力。強大なレジアンは世界を滅ぼす。だけど、魔王もまた世界の混沌を作った強大な力であった――我は魔王のイリアとして顕現する。ウィングコマンダーアンノウンよ。その力を――今、私にッ!」


 カマドウマは静かに額を上げ憤怒の形相を作る。

 迸る魔力が謎リボンの形状を変え、凶悪な触覚と変貌させる。

 鎌が形状を変え、魔物の顎となりカマドウマの

 バリバリと変形してゆくウィングコマンダーがカマドウマを飲み込み、最後の形態へと移行する。


 ――ウィングコマンダーアンノウン第三形態オンカマドウマ


 列車形態へと移行したウィングコマンダーの先頭に上半身だけを突き出し禍々しい姿へと変貌したウィングコマンダーと対峙し、俺は戦いの終わりを予感する。

 どこまでも獰猛に輝くソードの切っ先を天上に向け、捕らえた熱を放さず告げる。


 「便秘なんじゃねえの?ようやく出やがったなグロい一本グソ覇種。さぁ、ガチだガチだッ!ようやくにガチンガチンに勃起してきたぜッ!ヒィコラ言わせてやンよッ!」

用語解説

ライサンダー

 『地球防衛軍』シリーズのレンジャーの持つ最高威力を誇るスナイパーライフルの名前。

 同シリーズはアメリカ版『EDF』でネット通信による協力プレイが可能となったがボリュームに欠け、先日発売された日本版『地球防衛軍4』で正当な進化を遂げた。EDFとは「Earth Diffence Force」の略。


GJ

 グッドジョブの略。良い仕事をした場合に、ログに残る。

 モンスターハンターで尻尾を誰かが切った時や、ナイスタイミングで回復を入れてくれた時に使う。効率厨になると当たり前なのであまり使われなくなる。

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