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廃神様と女神様Lv1  作者: 井口亮
第一部『導入編』
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ウンコマン第1形態

オーベン城要塞最強のボス、『翼の指揮官』ウィングコマンダー。


 ――通称、オベン城の『ウンコマン』。


 二つ名持ちのユニークボスで、表記レベルはあてにはならない。

 ガニパリヘルと同様に強力な攻撃をいくつも持つ。

 だが、真にやっかいなのはこのユニークボスが『飛行モンスター』であることだ。


 『――シネッ!』


 おどろおどろしく響き渡るボスモブの声と共に、雷撃が地面に突き刺さる。

 フィールドの端で待機させたチュートリアを置いて俺は一人、フィールドの中心に雷撃の間を縫って走り込む。

 地上にほぼ張りつけ状態であったガニパリヘルとは基本的に戦い方が違う。

 空中に居る敵に近接武器は届かず、本来はナイト職がヘイトを取り、アーチャー系や魔法職系が射程を活かしてダメージを取る戦法がセオリーとなる。

 俺はウィングコマンダー――ウンコマンの下に入り込む。

 激しいエフェクトと共に突き刺さる雷光がいくら降ろうが、ウィングコマンダー自身に雷光を落としてはいないことから、そこがいわゆる『絶対安全地帯』となる。

 だが、しかし。

 そんなことは開発だって考慮済みだ。

 そうなれば、その対策としてのAIも組んでいる。


 ――ウィングコマンダーが取るべき行動は?


 俺はそこに爆炎水晶を設置し、ステップで距離を離す。

 次の瞬間、雷光と共にウィングコマンダーが槍を突き降ろしながら、垂直落下。

 地面に落ちると共に八方に走る雷光の衝撃波の間を抜け、俺はウィングコマンダーに駆け寄ると真正面から『スラッシュ』を叩き込み爆炎水晶を起爆させた。

 一瞬、光が集まるエフェクトが見え俺がステップで距離を取る。


 ――遅れて爆発が走り、ウィングコマンダーの身体を焼いた。


 よろめき、地面に落ちたウィングコマンダーに俺は続けて連撃を叩き込む。

 それに合わせ、遠くからチュートリアが弓の『ダブルショット』が突き刺さる。

 ヘイトを奪われないように『スラッシュ』で頭部への弱点ダメージを蓄積させ、俺は続く連撃を入れるだけ、入れ、シールドの『バッシュ』を使いスタン値を蓄積する。


 ――タイミング的にそろそろだと思い、俺は覚悟を決める。


 地面でもがくウィングコマンダーの額が赤く光った。


 『ウアァァァアアアアッ!』


 ウィングコマンダーは起き上がると同時に、稲光を周囲に広げ、槍を広げて旋回。

 起き上がり時に近接職を一網打尽にする『雷撃旋回』。

 起き上がると同時に、雷撃を伴う旋回攻撃をしながら螺旋を描いてと回る。

 俺はシールドのジャストガードを使って凌ぎきると、続くステップで起き上がったウィングコマンダーの首下に潜り込むと、背を向けて閃光水晶を投擲する。

 虚空で爆ぜた閃光水晶が目映い光を放ち、ウィングコマンダーを眩ませる。

 再び地面に落ちたウィングコマンダーを『スラッシュ』『バッシュ』で殴りつけ、チュートリアが弓で射貫きダメージを蓄積させる。


 「戦えてますねっ!マスターっ!」

 「油断するなよっ!飛行ボスはモンハンの基本戦術『飛ばしません。死ぬまでは』がセオリーだッ!だけど、それだけのアイテム持ち込んじゃいないッ!こっからガチになるぞッ!」


 飛行系モンスターを倒す最も簡単な方法とは?

 皆がアイテムを駆使して飛行させることなく、火力を振るい封殺してしまうことである。

 両手槌がいれば、『ストライク』あたりを頭に当ててスタンさせ、さらなるアタックチャンスを増やすのだが片手ヲリのバッシュだけではスタンまで持って行くことができない。

 ウィングコマンダーのヘイトは変わらず俺にある。

 そうなるように、チュートリアに攻撃を抑えるように指示していた。

 閃光水晶によるスタンから回復したウィングコマンダーが飛翔し、俺を見下ろす。

 幾度か放たれた槍からの雷撃をステップで躱し、俺は遠距離に位置する。


 ――ガニパリヘル同様に敵の行動を誘っているのだ。


 ウィングコマンダーの槍が赤く輝く。


 『クダケチレッ!』


 ――ストレンジアクション『雷撃突進』


 ウィングコマンダーの剣の翼が開き、雷光を帯びる。

 そして、雷光が即座に槍に走り、ウィングコマンダーが激しい飛翔音を残して、跳び上がる。

 フィールドである尖塔の下に潜り込んだウィングコマンダーが姿を現したと思った時には既に遅い。

 雷光を従えた恐ろしい速度の突進が俺に向けて放たれていた。

 だが、それより早く、俺は『ステップ』からの『スラッシュ』を放っていた。

 早すぎる攻撃は逆を返せば、攻撃判定の時間が短い。

 そうなれば、ステップの『無敵時間』で流すことができる。


 ――そうして、突進中の槍に『スラッシュ』を置き当てする。


 飛行系モンスターが近接職の攻撃が届かない空中に居るのであれば、飛行系モンスターの攻撃モーションというのは逆に、地上に居る近接職の攻撃が届くアタックチャンスでもある。

 フィールドを縦横無尽に何度も突進するウィングコマンダーを相手に、俺は悠然と『ステップ』と『スラッシュ』を繰り返し、雷光の走るフィールドの中に小さな火花を咲かせていた。


 ――さながら、激しい雷光の中で舞う一輪の花びらの如く。


 「綺麗……」

 「だが、ウンコマン」


 やることが今は無いチュートリアが感嘆の声を上げるが容赦なく水を差す。

 俺はウィングコマンダーの猛攻を凌ぎ切り、再び空中に戻ったウィングコマンダーの雷光を歩きながら避けると、スタミナを回復させる。

 雷光のエフェクトと攻撃判定が残っている間に、ウィングコマンダーは容赦なく俺に急降下して槍を突き込む。

 俺は高誘導の槍の突き込みだけを『ステップ』で避けると、振り向き様に槍にダメージを蓄積させていく。

 槍に亀裂が走り、破壊状態を確認すると俺はそれ以上の攻撃を止めた。


 ――雷光突撃の最中と、突き込み時に蓄積したダメージが『部位破壊』を引き起こしている。


 第一段階の部位破壊で攻撃を留めると、跳躍しウィングコマンダーの頭部を殴る。

 シールドの『バッシュ』を何度も当て、先ほどの蓄積値と合わせウィングコマンダーが地面に再び落ちる。

 頭部のアタックチャンスに俺は集中し、思い出したようにチュートリアの矢が頭部に刺さる。

 そうして殴るうちに、ウィングコマンダーの兜のバイザーが割れ、中からぎょろりと血走った一つ目が俺を睨んだ。


 「近くで見ると気持ち悪いのな」


 俺は手で合図し、チュートリアに攻撃を止めるように指示し、反対側の槍に攻撃を仕掛ける。

 やがて、再びストレンジアタック『雷撃旋回』のモーションに入るウィングコマンダーから距離を取り、俺はシールドでガードする。

 ジャストガードのタイミングをしくじり、HPを持っていかれる。

 ユニークモブの強力な攻撃力から放たれるストレンジアタックは適正レベルであってもデッドアクション並の威力がある。

 ごっそり持っていかれたHPに俺は即座にポーションを飲む。


 「だ、大丈夫ですかっ!」

 「……慣れれば『雷撃旋回』中にも切れるっていうけど、今は無理だな」


 ウンコ上級者達の変態っぷりが信じられない。

 徐々に回復するHPだが、この最中に攻撃を喰らえばひとたまりも無い。

 霊薬を併せて使用し、一撃死を免れるだけのHPを確保すると俺は再び槍による急降下攻撃を『ステップ』で避けて反対側の槍に攻撃を蓄積させる。

 第一段階まで破壊を終了し、ウィングコマンダーが第二形態へ移行する。


 ――アタックチャンスがさらに減る第二形態。


 しかし、仕込みさえしておけば何のことはない。


 「さぁ、いくぞチュートリア。『ペア』での戦い方をここで覚えろッ!」



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