お茶会の始まり始まり
今、私はめちゃくちゃ緊張している。
私が準備したお茶会が、今まさに、始まろうとしている。
うっ…お腹が痛くなってきた。
吐きそう。
と、ここまで全て真顔を保持したまま、会場の入り口で最後の流れ確認をしてる最中の、濁流となっている内心ですよ。
心臓出そう。
今日のサポートをさせて欲しいと、お屋敷に勤めていらっしゃる数人の男女が自ら名乗りを上げてくれたので、私はありがたく彼らに今日の対応をお願いした。
皆私をきらきらした目で見てくるので、断れなかったというのもあるけど、積極的にそう言ってくれるのは大変ありがたい事だ。
聖女様の人気は上々ということだろう。
と、プラス思考で頷いておく。
自意識過剰も時には大事。
お茶会があるからと言って、全員一斉に休憩に入れるわけではないので、仕事を終わらせ、身支度をした人からサロンに来てもらう様呼び掛けている。
そのため、開会のあいさつが無いのは救いだが、入口で出迎えるのが私の仕事となった。
おかげさまで、綺麗に装いを整えさせられました。
ご招待している相手の侍女さん達に着飾られるってどういう事なんだ?と思うけれど、楽しそうなので無問題ですね。はい。
女の子ってかわいくて最高だよね。
私も人を飾り立てながらきゃっきゃ言う側になりたい。
そこに混ざりたい。混ざらせろ。
そんなことを思いながら着せていただいたドレスはこれまた素敵な逸品。
柔らかな光沢のあるベージュと金のあいだ位の色合いの生地は、とても手触りが滑らかでうっとりする。
ドレスのスカートは、途中途中でドレープを作ってあって、まるでバラの花びらが折り重なっているかの様だ。
肩の出ているデザインだけど、首から鎖骨にかけては繊細なレースが折り重なり隠してくれている。そして、首の後ろにずらりと並んだ丸いボタンがまた可愛さの中に禁欲的な雰囲気をかもしていて、華やかさとかっちり感が本当に素敵なのだ。
これでがっぱりと鎖骨から肩にかけて防御力ゼロだったら、どんなにスカートのドレープや生地の光沢が素晴らしかろうと絶対このドレス着なかった。
むき出しの肘から下はこれまた同じく繊細なレースでできた装飾をしているんだけど、服飾知識のない私にはこの形状のものをなんというのかわからない。
中指に紐をひっかけて手の甲から肘までを覆っているこれ。手袋の派生と思えばいいのか?なんだろう。手の甲の部分は大きなバラが咲き誇り、それを細かなレースが際立たせている。
やっぱりスカートの形はバラがイメージになってるんだなと、この飾りを見て頷く私。
そんな装いの私と、お手伝いに名乗りをあげてくれた男女だけが今この部屋の中に居る状況だ。
ここからは、私一人で切り盛りしなければならない。
気合いをいれて頑張らねばね。
そう思い、私は部屋の中を見渡した。
お手伝いをしてくれる面々は、感想を書くためのカードを持ってスタンバイし、お菓子を盛り付けたそれぞれのテーブルの所でも説明要員として待機してくれている。
飾りつけは何度見ても素晴らしく、完璧だ。
テーブルの上には、綺麗にケーキが並べられ、花等も飾られていて目にも鮮やかだ。
全て計画通り。
ここで悪い顔でもして某キャラのまねなどしようものなら、色々と台無しになってしまうのでしないが、私は大満足で皆に頷いた。
「では、お茶会を始めましょう。」
私の声は少し震えなかっただろうか。緊張しすぎて自身の事がわからない。
しかし、そんな私の言葉を合図に、扉がゆっくりと開かれる。
誰も居なかったらどうしよう。そんな不安を吹き飛ばす光景がそこにはあった。
数名の男女が待っていたと言わんばかりの笑顔で、開いた扉から入ってきてくれたのだ。
それぞれに着飾った姿は、いつもと違って華やかだ。
本日は無礼講!
普段はしないようなおしゃれをして、お茶やお菓子を堪能し、ゆっくりと楽しんでもらう日。
男性はピシッと決めてるし、女性はかわいさや美しさに磨きをかけて参加している。
あぁ、眼福ぅ~。
「いらっしゃいませ。」
「今日は楽しんでってくださいね。」
「いつもありがとう。」
着飾った一人一人をしっかりと目に焼き付けながらも、そんな短い言葉を投げかけ、私は笑顔を彼らに向け続けた。
この日のために短い一言挨拶のバリエーションをこれでもかと練り込んできている。
入れ代わり立ち代わりに来てくれる方々は、それはそれは嬉しそうに私の言葉を貰っていってくれるので、すごいもぞもぞするけど、これは日ごろの感謝とお礼だからがんばれ私。と、心の中で自分にエールを送って耐える。
笑顔~。笑顔だぞ~。
引きつっていませんようにーと、祈りながら2時間弱の時間を耐え抜き、人の入りがひと段落したため、私はやっと室内を見渡すことが叶った。
見渡した室内は、リラックスしたムードで、心底安心する。
どのテーブルにも楽し気に話したり、笑顔で食べ物をつまんでいる顔が見えて嬉しくなる。皆それぞれに楽しんでくれているようで何よりだ。
何人かの従業員さんは去り際にお菓子の感想を言ってくれたし、こんな近くでお声をかけてもらえて光栄でしたと涙ぐんで帰っていった人も居る。
一応は、感謝を伝えることができたかもしれないかなと、そうした一つ一つを思い返し、私は一人微笑んだ。




