金の力でぶんなぐる的なあれですね。わかります。
うまく話の切れ目が見えなかったために今回は短いです。
サロンの飾りつけは、できれば自分でやりたかったのだけど、そういう力仕事は遠ざけられ、ステイを言い渡された私。
アレクシスさんに何とか食い下がったけど、ダメだった。
そんな、深窓のご令嬢でもあるまいに。
前の世界では仕事で駆けずり回ったりすることなんてしょっちゅうだった。
誰かの不注意や、期限の問題で自分で体をはって現場を整えるというのも経験しているのだ。
飾り付け位全然できる。
やれることに限りは出るけど。
が、アレクシスさんは頑として、その様な力仕事や雑用はさせられないと頷いてはくれなかった。
私をなんだと思っているのか…って、聖女だね。そうだね。いやでも、聖女様って言われても、庶民なんだって。
私からのお礼の気持ちなのに、余計な仕事をお屋敷のみなさんに課すのは如何なものかと言い募ったら、では、外部から人を雇い入れますと、人を手配されてしまってもう待ったの聞かない状況となってしまった。
私はお嬢様じゃないけど、お嬢様って大変だなぁと、しみじみ思う。
普段から何かとやらせてもらえないことがあるし、私どもにお任せくださいと周りの皆様は私を大切に大切にしまおうとしてくれる。
なんだかなぁ。
そんなこんながあり、とうとう私は、アレクシスさんの財布まで動かすようになりましたよ。
どうしてこうなった。仕事が早いぞ。アレクシスさん。
地に伏すような気持ちと称賛する気持ちが分離する私の心境を、汲み取ってくれる人などここにはいない。
カーライルさんには今回相談できないし。
エレイフに話したら、そのくらいの金額じゃ痛くもないんですから、出させておけばいいんですよ。と、言われてしまった。意地悪め。
サロンに入る手伝いの皆様。
普段と違ったざわめきが耳をくすぐる。
屋敷内にある備品の他に、搬入されてくる飾りつけのための布たち。
今ある屋敷内の備品だけでやろう。と思っていた私の考えは、これまたアレクシスさんの財布の力で亡き者にされたのでした。
金の力ってすごいよね。
きれいな布たちがよりどりみどりで、きらきらとした洪水が目の前にあふれている。
お屋敷にある備品も、品が良い物ばかりだったけど、アレクシスさんが用意してくれたものは、なんて言えばいいんだろう。
キラキラしたものが多いと言えばいいのだろうか?
かわいらしさというか?
ときめき感というか?
普段発揮されない乙女心をそっとくすぐられる感があるのだ。
黒を基調として、赤い縁取りと白いきらきらとした石を縫い込んだ布もあれば、ふわふわとした素材のパステルカラーの布もある。しっとりとした光沢のあるベージュの布は、さわり心地もすべらかでうっとりした。
これら全てが、私が説明した新しく開発したお菓子をそれぞれイメージさせるための小道具なのだから恐ろしい。
これが、アレクシスさんの本気の(財)力か…。
私の希望を叶えてくれるのはありがたいけど、仕事をした分だけ貢がれてる感がはんぱない。誰か助けて。せっかく脱ニートだなと思ったのに!ひもからは脱出できないのか?
素敵な布を前に、言葉の出ない私である。
ここでも、喜んでいいのか、それとも…?といった気分である。
複雑な心境なのだ。
「アオ様」
と、目の前の光景を眺めていた私の耳に低い声が響いてきた。
顔を向ければ、搬入チェックの終わったアレクシスさんがコツリコツリと優雅な歩みでこちらへやってくるところだった。
「注文していた備品は全て届きましたので、これから飾り付けを行います。基本的な指示は先日アオ様が作られた資料を渡しておりますが、要所要所で細かい指示を頂ければと存じます。」
「色々と準備のお手伝いを頂き、ありがとうございます。では、飾りつけを始めましょうか。」
内心の複雑な心境だとかは置いておいて、私はなるべくにっこりと笑ってそう言った。




