それならもっと付加価値つけてやろうじゃないか
申し訳ありません。
1話飛ばして更新していました。
正しい順番で更新しました。
皆様に振る舞おうと思っていたお茶とお菓子のあれそれが、全部まるっとダメな事を知った私ですが、えぇ、ここでめげてはいけませんね。
今飛ぶように売れているあ商品。私はそれらの販促に成功した営業だと自分の事を思う事にした。
私は敏腕営業。
私は敏腕営業。
この土地が潤えば、それすなわち、カーライルさんへの恩返しになる。とも、言えなくない。
そう、これは恩返し。
ならば、もっとこの土地に由来した他の物も人気商品にして、土地をもっともっと潤すのは私の役割。
いわゆる広告塔でもあると考えればいい。
うんうん。
そんな自分会議を締めくくりながら、私は同時に少し頭を抱えた。
でも、お気に入りの紅茶が品薄ってちょっとショックでかい。
もうすぐ中央教会に行く身だけど、王都だとまた流通が違うだろうし、口に合わないものが流行の中心だったらどうしよう。
私、宗教上の理由から、メシマズ文化は耐えられない。
頼む。王都でもおいしいごはんと紅茶とお菓子を口にできる環境であってくれ。
世界よ見てろよ。
お前らが品薄にした商品の他にも、聖女の名前を色んなものに付けてやるからな。
誰に向かって燃やしているのかわからないが、そんな闘志を燃やしながら、無駄になった企画書の切れ端を破棄だなと意識の端に追いやる。資材もったいない。
そんな感じで気持ちを持ち直し、私はコホンと咳ばらいをした。
「凄い事になっていて驚きました。」
「聖女様は屋敷からお出になりませんしね。」
「おいこら。お前はすぐそういう事を…」
「町へ行ってみたくはあるんですが、まだ色々と慣れないもので。我が侭や無理を言いたくはありませんしね。」
長身の料理人さんに、大胸筋の発達した料理人さんが突っ込むのを楽しく眺める。
仲が良いって素晴らしい。
なるほど長身の料理人さんの方がうっかり言いすぎてしまうタイプか。ふむふむ。
「聖女様が我が侭などと、この屋敷の誰も思っておりませんよ。」
料理長さんの優しいまなざしに私はほっこりしながら ありがとうございます。 と、お礼を言うだけにとどめた。
個人的には、喪女からニートに転身してしまったダメ女にありがとうございますと、心の底から思うばかりなのだけど。
うっ、心が…。
「そしたら、この辺りの特産物でよさそうな物を中心に使いたいのですが、何かありますか?」
「でしたら…!」
私の言葉に大胸筋の素晴らしい料理人さんが前のめりになりながら目を輝かせる。
あれもそれもと言葉だけじゃなく、奥から色々な材料を持ってきてくれるそのフットワークの軽さは素晴らしい。
これがどこの特産で~と、付け加えてくれるが、ごめんまって。情報量が多すぎて、私ちょっとわかんなくなってきた。
笑顔で頷きつつ心ここにあらずで目の前にずらりと並ぶ果物やら木の実やら果てはスパイス関係まで置かれていく様を私は眺める。
様々な食材で埋め尽くされていくテーブル。
好意的なのは嬉しくとも、好意的であれば何でもいいというわけではないよね。
候補がありすぎて何に手を付けたらいいかわからないというのはこういう事だね。
私の遠くなっている意識に気づいたのかどうかはわからないが、助け船を出してくれたのは料理長。
「聖女様のお好きな食べ物があればそれを中心に内容を組み立ててはいかがですか。」
さすが料理長!素晴らしい助け舟です!
素敵!素晴らしい!
大人の男性って素敵だね。
巌の様な料理長に感謝の念を込めながら微笑み、私は考えを何とかまとめようと考える。
オレンジ畑の他に、この辺りにはとても良いブドウ畑があるんだそうな。
干しブドウを使ったパウンドケーキも好きだけど、こっちでも存在するのだろうか…?
あと、ラムレーズン的な、お酒に漬け込む風習とかも。
ウォッカに漬けたのもおいしいよね。というか、レーズンはお酒との相性最高だよね。
チョコにそれらを入れ込むのもとてもおいしい。
チョコがこの世界に存在しているのも確認してあるから、お願いしたら作ってもらえるんだろうか。
そういえば、そもそも私はお酒をたしなんでいい年齢なんだろうか?
私自身は大人だが、この体はどう見ても10代後半。
はて?
「この辺りでは、レーズンをお酒に漬け込む調理法はございますか?」
少しばかり悩んだけど、食べたかったので聞いてみる。
チョコケーキ、ブランデーケーキ、ラムレーズンのお菓子…ただ私が食べたいだけだけど、ほんと、好きなんだよね。
ここでも食べれたら最高に幸せになれる。
「あとは、お酒をしみこませたケーキ等」
お三方は目を瞬かせ、私をまじまじと見てくる。
「もしかして、聖女様はお酒を嗜まれるのですか?」
「こちらのお酒は詳しくないですが、多少は口にしたことがございます。」
「今までご要望が無かったので、飲まれないのだと思っておりました。」
「ところで、お酒をしみこませたケーキというのはどのようなものですか?」
三人三様の顔で私を覗き込んでくるムキムキな男性たち。
うっ。なんだこれ。暑苦しい。
「お酒は無くても、ここのお料理はすごくおいしいですから、毎日楽しいですよ。」
「ありがたい事です。以前、天なるお方より祝福まで賜り…」
「今度食事に合うお酒もお出ししますか?この土地の良いのがですね…」
「いえ、それよりも、新しいレシピを…」
あれ、話が色々と重なり合い始めたぞ。
まってくれ。
何を言ってるかよくわからない。
舵を取っていただきたいが、料理長さんは感謝と感動をお伝えくださる事に力を注ぎまくっておられる。
いやいや、神様の所業なので、それは神様にどうぞだよ。
大胸筋の料理人さんは何でそんなにこの土地のダイマが激しいの。
地産地消大いに素晴らしいけども!
あと、お酒は気になります。
ちょっと味わう程度には嗜んでみたい。
そして長身の料理人さんの熱意よ。
お酒のケーキはこの辺りではメジャーじゃないのかな。そうか。
そうなると、どんなお酒が合うのかとかまでは私にはわからないんだなぁ。
困ったな!
そう、困った。
お三方の口が止まる事を知らない状況で、口を挟む余地がない。
ないよ。
処理できない情報量にくらくらしかけていたが、ぐっと踏ん張らねば話が進まぬ。
スムーズな会議、大事!
ぱぁんっ 柏手一つ、打ち鳴らす。
手を合わせたまま、静かになった場で、私はゆっくりと顔を上げると、お三方に微笑んだ。
「話が、それている様だわ。」
「そ…そうですな。」
「これは申し訳ない。」
「話を進めましょう。」
突然の音にびっくりしたらしい三人は、どこかポカンとした表情のまま、こっくりと頷きを返してくれた。
それにしても良い事を聞いた。
無い物を作るというのも良いのではないだろうか。
「せっかくですし、一緒に新しい可能性を模索する。というのはいかがでしょうか?新しい調理法であれば、近くの工場に製法を売って定期的に収入を得る事も出来ますし、地域の新しい可能性を広げる事も出来ますし。」
あ、これは、ちょっとわくわくしてきたぞ。
新しい事をするのはやっぱり好きだし、私のうろ覚えの知識でも、専門家とタッグを組めば何とかなるかもしれない。
これっていわゆる転移ものチート生活ってやつじゃないかな!
憧れの!チート!!
そんな邪な考え等おくびにも出さず、私は三人に笑った。




