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なぜか薄氷の美青年に頭を下げられています


「アオ様、手の中の物をどうぞこちらへ」

「ふぁっあっあぁおう」


 驚きすぎて意味の分からない言葉を口から吐出してしまう。

 ふおぉぉぉぉ…と、口の中で変な音を発しながら膝の上のハンカチの上にそっと手の中の物を飛び散らない様にと落とす。

 ころりころりと真っ白なハンカチの上で転がり、深い輝きを見せるのは紫の石。

 透明感ときらきらとした輝きが本当に綺麗だ。

 頭の中で数を数える。

 ひーふーみー…

 良かったちゃんと全部落とさずに持っていた。

 手汗で手に引っ付く事もなかった。


 ほっとして、顔を上げると、私の傍らに片膝をついて私の様子を見守っていたらしいアレクシスさんと目が合って、一気に顔に血が上る。


「ひゃっ」


 近いっ!まだ目の前にいらっしゃった!!


 慌てて視線をまた膝の上に落とすと、ころりと紫の宝石が目に映る。

 その視界の端にアレクシスさんの膝や手袋をはめた手とかもちらちら見えて、ダメだ。死ぬ…。


「あぁぁぁぁぁああの、お二人も、どうぞ座ってください。」


 ぷしゅーっと煙でも吹き出しそうな顔を伏せながら、二人に目の前のソファーを勧めた。

 とにかく距離を、距離を保たねば。

 それでも鼻血を流さない。私の鼻の粘膜の強さまじグッジョブだよ!それだけが救いだ。


「それもそうですね。」

「聖女様、失礼いたします。」


 アレクシスさんが立上り、至近距離から離れていく。その後ろで、カーライルさんが正面のソファーへ腰を落ち着けているのが見えた。

 私は、膝の上のハンカチの端をそっと持ち上げて、宝石が落ちない様に真ん中へ寄せて、それから、テーブルの上に置いた。

 膝の上に置いておいて、私が粗相しないとも限らない。怖い。


 そろりそろりとテーブルに移動させ終わったところで、顔を上げると、なぜかソファーに座っているのはカーライルさんだけ。

 あれ?と、思って視線を巡らせると、アレクシスさんの背中が見えた。どうやらお茶を入れてくれているらしい。

 って、え!?


 アレクシスさんが??お茶を??淹れてる??????


 なんで、というか、いいのか?いや、アレクシスさんってそもそもどういう人なの!?私の家庭教師できてくれてるけど、立ち居振る舞いとか、知識だとか、色々含めて総合しても、それなりに高貴な方なのでは!?いやでも朝の運動に付き合ってくれてる時点で大分奇特な方ではあるんだけども。それに、午後は研究で引きこもってるわけだし、普通に貴族とかではないのかもしれないけどだがしかし、なんかすごいアレクシスさんにそんなことをさせてはいけないのではという気持ちが半端なくてうわああああああああわけがわからなくなってきた。


 パンクした私が使い物にならなくなっている間にも、アレクシスさんはお茶を入れ、おかわり用の分まで多めに作って別ポットに入れて持ってきてくれている。

 さすが…隙のない配慮。


 私がアレクシスさんに気を取られている間、カーライルさんは何も言わずにそこに座っていてくれていた。

 それに気が付いたのは、恥ずかしながら、アレクシスさんが私と、カーライルさんに、お茶を持ってきてくれた時だ。


「こちらは冷めてしまいましたから、避けておきますね。」


 カーライルさんの手が、私の前に置いてあったカップとソーサーをわきへ寄せた。

 空いた空間にすかさずアレクシスさんが新しいお茶を置いて、カーライルさんの前にも置き、カーライルさんの隣に座りながら、自身の前にもカップを置いた。


「まずはお飲みください。上手いとは言い難いですが、飲めないものにはなっておりません。」

「お互い、落ち着いてから、話しを致しましょう。」

「頂戴します。」


 出された紅茶は優しい甘い花の香りがしている。

 味も優しく、ふんわりと香っていくのが心地いい。

 暖かいものが胃に落ちる感触が、体の緊張をほぐしてくれるのがわかる。


「お茶菓子もどうぞ召し上がってください。」


 勧められて手に取った焼き菓子は、上にオレンジ系のジャムをのせて焼いたものだ。

 ぱくり。口に入れて咀嚼する。

 程よい酸味がとてもおいしい。前、神様に似たようなお菓子を作ってお出しした時も、このジャムを褒めてたなぁと、思い出す。やっぱりおいしいなぁ。

 お菓子をひと切れ食べきり、もう一度紅茶に口をつける。

 柔らかい花の香がオレンジの風味とマッチしていて、とても幸せな味がする。


 ほーっと息を吐くと、これまで全身ぐちゃぐちゃしていた感覚がすっかり消えているのがわかった。


「落ち着かれましたね。」


 カーライルさんが柔らかく笑ってくれている。


「はい。お気遣いありがとうございます。アレクシスさん、お茶とてもおいしいです。」


 カーライルさんにお礼を言い、アレクシスさんにも、お茶の感想を伝え、また一口、お茶に口をつけた。うん。おいしい。


 微笑んでいるカーライルさんと、崩れない表情のアレクシスさん。

 二人を前に、さて、どこから何を話すのがスムーズか、また、何をどう聞けばいいのかと考えを巡らせる。

 私は混乱しすぎてて、女神様とお会いした後の事がわかっていない。


「改めて、聖女様にはご迷惑をおかけいたしました。」


 私が思考の海に溺れかかっている間に、カーライルさんがそう言って頭を下げ始めたのだった。

 なんてこったい!

 なんで私、こんな美青年にいきなり頭下げられるイベント迎えちゃってるの!!?

 誰か教えてそして助けて!!!





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