やってきました!女の子たちとのきゃっきゃうふふタイム
昼食の後、空の絵のかかる部屋へ戻ってしばし経った頃、数人の侍女さん達がお茶セットを乗せたワゴンを押してやってきた。
だから、カーライルさんはいつの間に…いや、侍女さん達への指示はアレクシスさんか?アレクシスさんもいつの間にってやつだよ。できる人って怖い。
最近ずっとあの二人に戦慄し続けている気がする。
だって、私はいち庶民以下略。
「聖女候補様にこうしてご挨拶させていただけて大変光栄でございます。」
「どうぞ何でも言ってくださいませ。」
にこにこと微笑む綺麗なお花さん達は、ぱっと見は全員普通の侍女さん達だったが、自己紹介の段になってちょっとずつ身分が異なることに私は気付いた。
お仕着せの揃いの侍女服だが、微妙なところに差異があり、襟がレースになっていたり、ボタンが綺麗な細工のあるものに変えてあったりと、みんなそれぞれにおしゃれをしているのだ。そのおしゃれポイントが、どう見てもお金のかけ方が違うのが見て取れる。
中央教会に来て6日、これまで全然気付かなかったとは不覚。
「私は尊き実りある紫色と輝かしき幸色の一族に連なるアプト家の娘。クラーラと申します。」
一人目の自己紹介で、家名と色が持ち出されたことに私は内心ドキリとした。
今、なんて?と、聞き返さなかった私えらい!
そうして初めて彼女が貴族のお嬢さんであることに気づいたのである。美人なはずですよ。
艶やかな髪。磨かれた肌。指先やつま先まで洗練された所作。美人なはずですよ。
上品にうふふと笑うすべらかな頬は思わず触れたくなる肌理の細やかさである。本当に、何度も言うけど、美人なはずですとも。何もかも、一般人とは下地が違う。
しかも、恐らくではあるが、口火を切った彼女はこの中で一番家格が上なのだろう。なんとなくだが、全員が彼女にまずは順番を譲ったのがうかがえた。
クラーラさんは艶やかな唇がとても素敵な女の子で、見た目年齢から推察するに、私の見た目年齢よりちょっと上位の歳だろうか。
堂々としたたたずまいはまさに誇りを持って輝く貴族のお嬢さんである。
なんでこんなところで侍女しているんだろうと思うけど、ヲタクの知識をよみがえらせた私ははっとする。侍女さんでもランクが確かあったな?と。
私はメイドフェチとかではないのであまり詳しい事はわからないが、貴族や王族を題材にした作品などではよく見かける話だった。
恐らくは、彼女は地位ある女性の話し相手をしたり、身の回りのお世話をするような、いわば上級職的な仕事に従事する侍女さんなのだろう。
そして彼女に続き柔らかな微笑みと豊かなバストをお持ちのお嬢さんが口を開く。
「清純なる淑女の白紫と豊かなる若緑を掲げる南の地を預かりますバイルケ家の、アンネリースでございます。」
声も柔らかく澄んでいる。まるで広い野に瑞々しく通る乙女の歌声。心地の良い音に惚れそうになる。
年齢はこの中では一番高い気がする。結婚はされているのだろうか。女性にそれを聞いていいものか…悩ましい所である。
「北のアイネム家のエルマと申します。父は女王陛下の騎士としてお仕えしております。私も聖女様に誠心誠意お仕えしたく存じます。」
にこっと元気に笑ってくれたのは私よりちょっと年下っぽい朗らかな女の子。飾り気があまりないのは、騎士の御父上の気性を継いでいるのだろうか。色を言わないのは貴族じゃないという事なのか、それとも、そこに重きを置いていないという事だろうか。
家名を名乗っている辺り、貴族の様な気もするが、後でアレクシスさんに聞いてみようと思う。
彼女の服装は、小ざっぱりとした中にもブローチなんかの飾りをつけているのが見えるので、ご実家はそれなりにお金はあるのだろう。
それにしても、私に仕えてもらっても困る。
何も対価をご用意できないんだわ。無一文ひも生活なので。少女よ、どうか安泰のアレクシスさんの所で頑張ってくれ。
「シアと申します。」
最後の一人はそうしずしずと、端的に自己紹介をした。これは明らかに貴族の出ではないという事だろう。
だが、貴族でなくとも彼女の身に着けているものはさりげなく趣味が良い。
リボンやボタン等、自分で変えたのであろうことがわかるそれらは、とてもまとまりがよい。高い石がはまっているわけではないし、目立つような造りをしているわけでもないが、一ひねりあるデザインのものがシンプルにまとめ上げられている感じがする。こういうのを見ると、着るものは金額ではないとしみじみと思うよね。
こんなセンス、私も欲しかった。
「私はアオです。こちらにいる間、宜しくお願いしますね。」
四人の挨拶が終わり、私はにこりと微笑み挨拶を返した。




