025 鳥肌の正体――地下駐車場でビビった俺
先週の土曜日のこと。
……正直、そんときは本気で、
**「あ、俺、今日で人生終わるわ」**って目に遭いました。
夕方、カミさんを眼科まで送り届け、
その雑居ビルみたいな建物の、
うす暗い地下駐車場に車を停めて待ってたんです。
駐車場はガラガラ。
エンジンを切って、車内でぼーっとしていたら、
正面に、すでに一台だけ車が停まっていました。
相手の車は動いていない。
たぶん、俺と同じで“待ち”なんだろうな、と。
スマホをいじりつつ、
ふと顔を上げた瞬間――
……なんか、視線を感じる。
いや、ほんとに。
「見られてる」っていう、あの嫌な感覚。
正面の車を見る。
運転席には、誰もいない。
……なのに。
後部座席。
前席のヘッドレストの“すき間”から、
こっちを見ている“何か”がある。
顔っぽい。
目のようなもの。
でも、動かない。
じっと、こちらを見ている。
(……なに、あれ?)
数秒、目を凝らす。
動かない。
それはまったく、動かない。
「車に付けてる何かか?」
「ぬいぐるみ?」
「前席には誰もいないんだから……」
そう思って、
「まあ気のせいか」と目を逸らそうとした――
その瞬間。
動いた。
それが、
――スッ、と。
首……?
いや、顔……?
ゾワッ!!
背中から一気に鳥肌。
心臓が、ドン!って鳴った。
(やばい。
これ、見ちゃダメなやつだ)
もう一度、正面の車を見る。
――そこで、理解した。
後部座席。
ヘッドレストの間。
そこにいたのは――
大型犬。
ただの、犬。
しかも、「あ、やっと気づいてくれた?」と言わんばかりの、
目が優しく、めちゃくちゃ穏やかな顔。
「…………おまえかよぉぉぉぉぉ!!!!!」
声に出てたと思う。
俺、車の中で一人で。
犬はというと、
「ん?」って感じで首をかしげて、
またじっと、こっちを見てる。
……いや、そりゃ見るよな。
地下駐車場で、
変なおっさんが固まってたら。
◇
【教訓】
・閑散とした地下駐車場では、
おっさんの想像力は「ホラー映画」を創り出す。
・視線の正体は、だいたい無害な天使。
・そして、この場で一番「不審者」なのは、間違いなく俺だ。
(あの人間、さっきから動かないけど大丈夫かな?)
……犬のほうが、よっぽど心配してくれてました。
【了】




