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気まぐれしょうもナイト【更新不定期】  作者: すっとぼけん太
23/23

023 大学ミッション――秋の地獄に叫んだ日曜日!

――日曜出勤。


今日のタスクは、大学メインサーバーの入れ替えの立会いだ。

早朝の寒空の中、マイカーで現場へ向かう。


街ゆく人は風に肩をすくめ、下を向いて歩いている。

しかし――


うちの車だけは胸を張って輝いていた。


そう。

昨日、寒風吹く中で、

3時間かけて『洗車&ワックスがけ』をしたからである。


今日は、ピッカピカのキラッキラ。

もはや“動く鏡”。


(おー、まぶしいよー☆)



大学に着くと、警備員さんが笑顔で言った。


「今日は休みだから、どこ停めてもいいよ~」


(マジっすか?)


俺はゆっくり景色の良い場所を探す。

背景と風景が映える、俺の子が輝く――そんな美しい場所を。


だけど、どこもチマチマと、薄汚れた車が止まっていて、

うちの子を中心にした景観には邪魔。


そしてついに見つけた。

ある一角に――誰も止めていない場所があった。


まるで俺が来るのを待っていたかのような、

VIP専用の予約席。


校舎そばの並木道へスッと駐車し、振り返る。

うっとり。


(よし、よし……惚れちまうぞ!)


少し離れて、また眺める。


「……うん、やっぱり美しい」


(秋景色に似合いすぎるだろ俺の子!

 そして周りに車がいないのが最高!!)



構内ではすでに作業メンバーが集まっていて、

大学職員も笑顔で迎えてくれた。


新サーバーの入れ替えは――

想定外のケーブル探し回り、

心臓止まりそうな瞬間も乗り切って、

なんとか無事に終了。


報告を済ませたのは、15時40分。


「やれやれ……今日はいい日曜仕事だったなぁ」


ご機嫌でサーバー室を後にし、

校舎から駐車場へ向かう――。



秋の大学を背景に愛車を眺めながら歩いていたら……


「ん!?」


――何かがおかしい。


俺のピカピカ号に、つぶつぶ模様が……?


近づくにつれて胸がざわつく。


「なんだ?」


ボンネットもドアも、

茶色い丸いモノがびっしり。

それも立体的。


花? 実? 樹液?

いや、なんだこれ。


さらに歩み寄ると、横の木にぶら下がる札が風に揺れた。


「……ア・ケ・ビ」


……アケビ?

なにそれ。デザート? それとも地獄の果実?


慌てて、ティッシュでつまむ――


ヌメェェ~~ッ!!


あんず飴の成れの果てのような粘りが指に絡み、

車にしがみついて剥がれない。


「溶けかけの怪獣の脳みそか……?」


もう、脳の半分が停止。

そしてその香りは――秋の腐乱実。


「アケビってなんだよぉぉぉぉぉ!!!!!」


俺は空を仰ぎ、

静まり返った大学で、日曜なのに叫んでしまった。


そして悟った。

――なぜ誰もここに停めていなかったのか。



あんなに輝いていたボディが、

今や アケビ・ヌルヌル・カーニバル。


頭の中で南米の太鼓が鳴り響く。


「オーレッ!!」


車内にあったウェットティッシュで拭くが、

伸びるだけで取れない。


サーバーより先に俺の心が固まった……いや、凍った。


完璧な仕事を終えてホッとしたその瞬間に、

茶色いまだら模様の愛車が、涙で曇って見えた。

(比喩じゃない。いやほんとに)



【今日の教訓】


・自然はいつでも、努力の上に“粘着”してくる。

・誰も停めていない場所には、訳がある。

・ホッとした、次の一瞬に気をつけろ。

・そして――サーバより大事なのは、車と体の保守作業。


昨日の洗車で筋肉痛の腕が叫んでいた。


……もう日曜出勤前には洗車しない。


【了】

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